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とうとう涙を零して謝り続けるAの頬に、細く嫋やかな指が伸びる。溢れる涙を掬った真依は、しゃっくり上げて泣き出すAの頬を撫でて言った。
「Aは小さい頃から人見知りするしすぐ泣くし、呪術師なんて向いてないと思ったのよ。真希は見ての通り口も態度も悪いから、Aが辛くて痛い思いをするだけだと思ったの」
「っ、」
「それでもアンタは努力して強くなって、私、そんなことになるなんて微塵も思ってなかった。知った気になって大きい態度とった自分が嫌なのよ」
Aの努力と真希の苦労を認めないわけじゃない。
2人との差が開いたのも、全部自分の無力さの所為だと気がついた。どれだけ足掻いても2人には到底及ばない。
悔しくて、惨めで、辛くて。色んな感情がごっちゃになって、子供じみた八つ当たりをするくらいしか手はなくなってしまっていたのだ。
「私じゃ真希には届かないから。そんな真希と並んで歩いてるアンタが羨ましかった」
すると、ぽつりと零れた真依の言葉に、Aは泣き腫らして赤くなった目をぱちりと開いた。
「じゃあ、もう1回並び直したらいいやん」
「…………は?」
「よく3人で遊んでた昔の時みたく、仲直りして手ぇ繋ぎ直したらいいやん」
「何、言ってんのよ」
強くてかっこよくていつも背中を押してくれる真希。
優しくて美人で、理想のお姉さんな真依。
世間知らずの幼いAがある日出会った2人の姉妹は間違いなく、彼女にとって1番の憧れだった。
両手を繋いでくれる手は暖かくて、名前を呼ぶ声は優しかった。だから、
「………………ぷっ、」
仲直り、なんて幼稚園児じみたこと言ってんじゃないわよ、と真依は吹き出した。その笑顔に、Aの表情もぱあっと明るくなる。
(やっぱり真依は、笑ってた方が可愛い)
2人には、笑っていて欲しいのだ。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月26日 12時