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暫く棘にくっついたままにこにこしていると、不意に医務室の扉がドンドンと叩く音が響いた。
それに思わず肩を揺らすと、返事をするより先に扉が開け放たれる。
「A、生きてっか?」
「差し入れだぞー」
そこにいたのは真希とパンダ。
ボロボロになっていた2人は案外けろっとした顔をしていて、パンダの手に提げられたビニール袋からはほんのり甘い匂いがした。きなこだ。
「……!真希とわらび餅」
「最早名前すら呼んでくれねえって何事」
「ドンマイ餌付け係」
「しゃけ」
目をきらきらさせてわらび餅に飛びつくAの姿に、やれやれといったようにパンダが頭の後ろを掻く。
そんな視線などに目もくれず、Aは「これ食べていいん?」と聞きながらもわらび餅をひとつ口に放り込んだ。
「でもまァ、その様子じゃ大丈夫そうだな」
「しゃけしゃけ」
体力も底をつき、とっくに倒れていたであろう状況でも戦い続けたAは頼もしかった。普段の泣き虫っぷりとは大違いだな、と真希は笑う。
「硝子サンも言ってたぞ。『あのAがあんな大怪我して帰ってくるなんて』って」
「でもほんと成長したよな、前まではグラウンドでコケて膝擦りむいただけでピーピー泣いてたのに」
「ピーピーじゃなくてギャーギャーだろ」
「私のこと小学生かなんかと勘違いしてへん?」
「おかか。すじこ」
「いや誰が幼稚園児や」
いつもは涙目でオロオロしているAから発された珍しく鋭いツッコミに、ぷっと棘は吹き出した。それにつられて真希とパンダも笑いだし、Aは早くも空になったわらび餅の箱をぺしぺし叩きながら「笑わんとってよ!」と反論する。
「みんなして酷。もー私お茶買ってくるわ」
「お、じゃあ私の分もヨロシク」
「俺のもよろ」
「ツナ」
「パシられた!うわぁああ野薔薇ちゃん助けて」
拗ねたように唇を尖らせて医務室を出るふりをすれば、何故かノリ気な3人は快く手を振ってきた。
Aとしてはここで引き止めて欲しかったのだが。
まあ言われたからには仕方ない。ここで「寂しくて引き止めて欲しかっただけや」とか言うのも何だかかっこ悪いし、実際、喉が渇いているのも事実なので黙って自販機の方へと向かった。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月26日 12時