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真宮、と呼ばれた傷の男は、やけに友好的な口調で伍代くんに話しかけている。知り合いなのかな。
それでも伍代くんは、へらへら笑う真宮をキッと睨みつけて、低い声で言う。
「今すぐその手ェ離せ。ぶっ飛ばすぞ」
「最近は、えれぇだせえのとつるんでんだな」
「…………うるせえよ。離せっつってんだ」
「はいはい」
ぽいっ、と。ゴミでも捨てるかのように放り投げられて、瓦礫の山に頭から突っ込んだ。
身体を引き摺りながら島崎くんが近寄ってくる。わたしはそんな彼に何かを言う余裕もなく、やっと空気を受け入れた身体にひたすら息を吸い込んで、ゼェゼェとむせ込んでいた。
「オイ直樹、俺は仕事の話をしに来たんだよ」
「…仕事？」
「簡単なもんよ。潰れかけの印刷工場からトルエンをごそっと頂くだけだ。これさえ上手く捌ければ、秋田組の人間紹介してもらえんだ」
トルエン…っていうと、塗料とか接着剤に使われてる液体。人体に触れるだけでも死に至る可能性があるとかいう、とんでもない有毒物質だ。それを入手して彼らが何をしたいかなんて、まともに働かない頭でも理解できて、ゾッとする。
何の話かはさっぱり分からないけれど、こんな“仕事”、伍代くんにさせる訳にはいかない。
「だからよ、手貸してくれねえか」
「なあ直樹」と、悪魔の囁きが伍代くんを誘う。……それでも、彼は揺れなかった。
肩に置かれた手を振り払い、真宮の傷ついた顔を勢いよく殴り飛ばす。うわ、まともなのいったよ。よろけた真宮は「これがお前の答えか…」と呟くと、顔を上げるや否や、前髪をぐいとかき上げて、額の傷を顕にした。
「…………俺はなァ、この傷を見るたびお前を思い出してんだ」
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はるちよ - とても面白くて毎日読み返しています！リクエスト良いですか？！今の五代くんの話が終わったら寂しくなってしまうので、もしまめこさん さえよえれば、五代くんの話を他にも書いて欲しいです。 (11月10日 18時) (
レス) id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月3日 12時
