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｢じゃあどうして呪術師になろうとしたの？私ならずっと家に籠ってるだろうけど…………｣
｢私もそうしてたかったよ。でも、そういう訳にはいかんくてねえ｣
家の繋がりで禪院姉妹と出会い、それから外に触れる機会が増えてきて、ふと気づいたのだ。
｢“見える”のに見て見ぬふりすることはできひんくてな。呪霊や悪霊に苦しめられてる人はいっぱいおる。それを無視して生きていくなんて、私には無理や｣
こんなにもできた能力を持っていながら誰も助けることが出来ないなんて嫌だ。どうせなら人のために使いたい、と罪悪感が押し寄せて、呪術師になることを決めたのだ。
｢それを言うたら家は猛反対して、暫く部屋から出してくれへんなって｣
｢ええ、それ監 禁じゃない？！…いや、軟 禁？｣
｢でも諦めたくなかったから、特訓頑張ってん｣
生まれて初めての反抗期。反抗するならとことん反抗してやろうと思ったわけで、呪術師になりたいと意地を通して、渋々承諾してもらったのだ。
｢それって……家が連れ戻しにとか来なかったの？｣
｢うん｣
何度も連れ戻されそうになって、その度に皆に守ってもらって。呪術師になることを許してもらったのは少し前の話だ。
しかし小さな反抗も、まだ終わったわけではない。
真希だってその実力を家に認めてもらっていないし、呪術師への道はまだまだ遠い。だからこそ、
｢まだ怖いけど、頑張るねん｣
そう言ったAの笑顔に、野薔薇は嬉しそうに目を細めた。
｢ふふっ｣
ただの鬼だと思っていた先輩も、誰よりも弱いと思っていた先輩も、想像以上にずっと心優しくて強い人だった。野薔薇はそれが嬉しくて、前を歩く真希とAの間に飛び込んだ。
｢私は真希さんもA先輩も、尊敬してますよ｣
その言葉に2人は顔を見合わせると、真希はそっぽを向いて、Aはにっこり笑った。
｢あっそ｣
｢へへ。ありがとう｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月12日 12時
