episode #59 ページ11
･
(ほんと、血って大嫌い)
その身体に流れる血のせいで平凡を捨てた芽衣と、ハナから生きることを諦めたA。そんな彼女らが笑って過ごせる世界は、いつ訪れるのだろう。
｢─────大丈夫だ……！｣
俯く芽衣にどう声をかけていいか分からずに立ち尽くしていると、四季が動いた。四季は芽衣の前にしゃがみ、小さな身体を抱きしめる。
｢俺が！この先笑って過ごせる世界にしてやる！
だから、大丈夫だ…………っ、｣
悪なら悪らしく、間違った正義をぶっ潰してやる。
単純でバカみたいな発想だ。けど、力強く放たれたその言葉に、Aは得体の知れぬ安心感に苛まれた。
どうやらそれは芽衣も同じだったようで。芽衣は落ち着いた口調で｢うん｣と頷いた。そんな芽衣の頭を撫で、京夜が言う。
｢………仲間たちの遺体を処理してやらないとな。
四季くんは芽衣ちゃんを頼むよ｣
緊急時でもテキパキと指示を飛ばす京夜のお陰で誰も混乱せず事態に対応できている。ただのチャラ男と思っていたが、カリスマ性はあるようだ。いつまでも俯いてはいられない。とりあえず動かなければ。
｢Aちゃん皇后崎くん、遺体を運ぶ場所案内するから一緒に行こう。他の人は遺体を一箇所に集めておいてちょうだい｣
そう指示を出され、迅と京夜と3人で部屋を出た。
京夜曰く、Aたちが通ってきた通路の傍に火葬場があるらしい。Aは京夜と迅の少し後ろを歩きながら、遺体処理の手順を聞いていた。
｢つーかさ、彼女とかいんの？｣
｢…………｣
｢やっぱり高校生だし青春しないとねえ。ねっ、Aちゃん｣
｢無視されてやんの｣
尽くスルーされ、それでも折れる素振りを見せない京夜は、黙ってついてきていたAに話の矛先を向ける。｢Aちゃんは彼氏どお？｣と聞かれるが、こちとら彼氏どころか友達もいた試しがない。いるわけないでしょと答えると、何故か京夜は目をキラキラさせてAの肩を抱き寄せた。
｢Aちゃんは可愛いなあ！『大きくなったら京夜お兄ちゃんと結婚するー』ってやつ？よく言ってくれたよねえ｣
｢ポジティブ…………｣
迅に助けを求める視線を向けるが、もちろん助けてくれなどしない。そしてAは京夜と結婚するなんて言った覚えはないので勘違いしないで欲しい。
｢私、軽い人は苦手なの｣
｢え、何それ初耳｣
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 234人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レン(プロフ) - 桃源暗記の夢小説少ないんでめちゃくちゃ嬉しいです！しかもお話も面白くてもう神かなんかですか?!これからも無理せず更新頑張ってください!応援してます！ (2022年1月4日 22時) (
レス) id: 9afc0ca98b (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 思わず一気読みしてしまいました！とっても面白いです、更新も無理ない程度に頑張って下さい！ (2022年1月3日 0時) (レス) id: 16a4fd6cb5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 久々に更新嬉しい！ (2021年11月17日 18時) (レス) id: bb356cf189 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - ヒロアカでまめこさんに出会いまして、桃源暗鬼も書いてる！ってなって来ました！これからも引き続き更新頑張って下さい！ (2021年9月12日 11時) (レス) id: 1c4434e42e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - もうほんと最高です (2021年8月20日 22時) (レス) id: 75eebcd608 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月31日 19時
