第二十一話 M side ページ21
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『俊くんただいま〜』
もうすっかり外は真っ暗で、時計の針は20時を示していた。玄関からたまの声が聞こえ向かうと、初出勤の疲れからか俺の身体に身を預けるように倒れてきた。
「大丈夫?ちょっと疲れてるみたいだね。とりあえずリビング行こっか。」
当たり前のようにたまを抱きかかえ、リビングのソファにゆっくりと下ろした瞬間に、衣服から覗かせる鎖骨に紅い痕があるのが見えた。
「ねえたま、これなに?」
その痕を優しく撫でながら尋ねると、しばらくの沈黙の後手で口元を抑え何かを思い出したように慌てふためくたま。
意味深なその行動に僅かな苛立ちを覚え、今度は首筋に鼻を付けてみれば誰のものか分からない甘ったるい香水の匂いがした。
「誰に痕付けられたの?この香水は誰のものなの?」
『えっと、それは…その…ふじがやさんに…』
「藤ヶ谷ってあのお屋敷のご主人様だよね?何でそんな事された?ちゃんと教えて?」
苛立ちは収まるどころが募る一方で、たまの事になると余裕なんてなくて。それなのに目の前にいるたまは、頬を赤く染めながら恥ずかしそうにしている。
『…あのね、俺、藤ヶ谷さんに…キス、された…あと、これから一緒に働いていく人にも…』
ようやく口を開いたたまは、そんな衝撃の一言を口にしたんだ。
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作者名:みやたま | 作成日時:2021年10月16日 0時