毒林檎 (ページ14)

今日:1 hit、昨日:31 hit、合計:14,915 hit

第十四話　M side ページ14

.

『俊くん、あのさ…』

アイスを食べ終えたたまが突然、神妙な面持ちで話し始めた。

『そろそろ働かないとって思ってるんだけど、仕事ってどうやって探せばいいのかわかんなくて。良かったら教えてほしいなって…』

たまなりに気遣ってくれているんだろうが、俺の手元にはまだ手に余るほどの貯蓄がある。

無理して働かせるよりはここでゆっくりしてほしいという思いもあるけれど、たまはそれだけは譲れないようで。

それならばとさっきニカから聞いた案件を話してみると、
目を輝かせながら“そこで働きたい！”と言うので仕方なく、ニカに電話を掛けるとすぐに承諾を得た。

本当は四六時中ここに閉じ込めておきたい。

誰のところへも行かせたくないけれど、高校を出てから一度も働いた事がないというのなら、少しは社会経験をさせてあげても良いかなとも思った。

さっそく明日から働いてほしいと言われたのでそれを伝えるとたまは大喜び。

『俊くんに恩返し出来るように俺頑張るね。』

そんな可愛いセリフを呟きながら明日の仕事に胸を躍らせるたまは、鼻歌を歌いながらリビングを後にした。