弐 ページ2
双子は元来縁起の悪いものであったという話はこの家では今も尚そうであると信じられている。
この家の直系のある男の奥方が妊娠した時はそれはそれはお祭り騒ぎだった。
家の者たちは絢爛豪華な屋敷で酒を飲み、夜通し騒いだ。
しかし、そのわずか数日後にその子供は2人であることが判明した。
古ぼけた家の者たちは使えないなら捨てればいい、といったどこか現代的な思考で楽観視していた。
しかし生まれた赤ん坊の一人はこの家では宝である眼をもって生まれた。
男の子であることも相まって生まれたもう一人の女の子は目が開いたその日に処分されるはずだった。
しかし女中たちはどうか生きてほしいと忙しい仕事の間を縫い彼女の世話をした。
私たちを助けてほしいなんていった甘い期待もあったのかもしれないが、ひどく優しい綿のような何もない世界だった。
そんな世界はたった半年で崩れた。
誰かが密告したのか、赤ん坊を育てた女中は全員処刑された。
「あの子の血のつながった子供なんだ。
この子は使えるぞ。」
当主のその一言だけで赤ん坊は生かされた。
そしてその赤ん坊は汚れ仕事の暗部で育てられることになった。
物心がつく頃になると、大切な宝物を殺そうとしたものを殺した。
手ほどきでは殴られ蹴られ斬られ投げられた。
時には短刀を一つ握らせて呪いの海に投げ入れられた。
侵入者の爪を剥ぎ、手足を折り、断裂魔の中で情報を抜き取った。
そんな中で血を流さない日は1日もなかった。
傷を抑えるための綺麗な布はなく、針と糸でチクチクと己の傷を縫うことを教えられた。
ある日へまをやらかした。
同い年くらいの目が青い男の子に見られた。
それだけで少女はうす暗い小屋に閉じ込められた。
少女は抵抗するということを知らない。
もし知っていたとしても傷が増えただけだろう。
少女は逃げると言うことを知らない。
逃げようとしても小屋に繋がる足枷で逃げられないのだが。
少女は知らない。
偶にくる人間が自分の血族であることも、自分に双子の兄弟がいることも。
少女はいつしか忘れてしまった。
痛みも、温もりも。
昔の事も。
少女は1日に一度与えられる食事を食べることしかしない。
他は全て言われた通りにしか出来ない、出来損ないの人形だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1379人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Lily(プロフ) - ありがとうございます！ オリキャラは自分の性癖ぶち込んでマシマシで書いてます!! (2021年1月14日 19時) (
レス) id: fd1be6be46 (このIDを非表示/違反報告)
め - コメ失礼します。とっても面白いです！もう設定が好みすぎて、、、これからも更新頑張ってください、応援してます。 (2021年1月14日 19時) (レス) id: 294cb89c1c (このIDを非表示/違反報告)
Lily(プロフ) - 彩音さん» ありがとうございます！ (2021年1月14日 19時) (レス) id: fd1be6be46 (このIDを非表示/違反報告)
彩音 - めっちゃいいです!!! (2021年1月14日 19時) (レス) id: b864e622be (このIDを非表示/違反報告)
Lily(プロフ) - 雪マカロンさん» ありがとうございます！ (2021年1月14日 18時) (レス) id: fd1be6be46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lily | 作成日時：2021年1月13日 16時
