19 ページ23
▽▽▽
「(完全無罪を主張する)」
この学園では原則私闘は禁止。特別な場合のみ教師の許可を得ることで正式に行うことが出来る。
が、今この状況では目の前の彼が許可を取っている風には見えないし、なんなら私は完全な被害者だ。
グググッと首が絞まる。「なんで手前みたいな劣等生がチームに所属してんだよ」瞳に闇を宿した目の前の彼は私と同じ色のネクタイをしていた。
何故こうなった、と思考を巡らすが生憎心当たりは一つもない。無理矢理連れ込まれた空き教室は危なっかしくごちゃごちゃ物がつまれている。
「(抵抗したってなあ)」
霞む視界の中思考する。どうせ死ねないのに苦しい思いをするのは少し損した気分だ、と悪態をついた。
「ふざけんな、ふざけんな！」
こもる力。意識が落ちる、と構えるように目を閉じた。
「何しとんの、自分」
完全に落ちようとする意識の中独特なイントネーションの声が聞こえる。
「っはあっ！」
男の体が地面に転がった。痛いくらい吸い込んだ酸素に胸を押さえ、同時にはくはくを金魚のように酸素を求める。苦しい。
「あかんわあ。女の子に手えだすとか最低ちゃう？」
耳。モフモフと毛皮におおわれ、ピコンと上を向いている。「ああでも死なんのか、その子」見下ろすように彼が言った。目が合う。
「……誰だ」
「誰？俺に聞いとんの？1年か、自分」
彼は目線を私から少年へ向けた。ふさりとした尻尾が揺れる。
交流会では見なかった顔だった。というか、見ていたらきっとすぐ分かる。特徴的な耳と尻尾は狼のもの。いわゆる獣人だ。
「あー。何と契約したん？それ。完全に目いっとるなあ。えらい面倒や」
彼は本当に嫌そうに顔を歪めた。「ま、ええ」と気だるそうに口にしてから一瞬。
「寝とき」
「うわ」
鳩尾に一発。思わずその容赦のなさに声をあげた。男子生徒はピクリとも動かず、グタリと糸の切れた人形のように彼によしかかる。
ペッと彼はその男子生徒を地面に転がした。
「助けたったのにその反応はどうなん？あ？」
「ありがとう、ございました」
未だ唖然としつつなんとかそう返す。「おん。案外素直なんやなあ」
「気に入らんわ」
スッと背筋が冷えた。心のそこから私を拒絶するような、嫌悪するような目。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
える(プロフ) - 汐見さん» コメントありがとうございます！賛否ある設定の物語ですが、そう言っていただけて幸いです(*^^*)これからもよろしくお願いいたします (2020年3月1日 11時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
汐見(プロフ) - 初見です！とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2020年2月29日 16時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 凜乃さん» ありがとうございます！長編の予定ですので、ごゆるりとお付き合いください。わざわざコメントありがとうございました(*^^*) (2019年12月12日 21時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
凜乃(プロフ) - 毎回とても楽しみにさせて頂いてます。更新頑張ってください (2019年12月11日 23時) (レス) id: 8218d9be2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：える | 作成日時：2019年12月4日 17時
