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「鬱陶しいっての」
飛び回る球体が邪魔で生徒会長に近づけもしない。銃弾は通らないわ投げナイフは避けられるわ。口からもれる呼吸も言葉も、余裕を下手に取りつくろっているだけだ。
「十分君の動きだって鬱陶しいけどね。これだけの数でも当たらないとか」
「どんな反射神経してんの？」と疑問を口にする彼にはまだまだ余裕がありそうで、「どーも」と強がる私はきっと惨めに見えるだろう。
「わざわざ生徒会長である貴方が時間をさくほどたいした能力なんかじゃあないんですよ？」
「さあ、どうだろ。そのわりに君は随分頑なだね」
チリっと頬に痛みが走る。どうやら彼の魔法でえぐれた地面の破片がかすったようだ。「俺は女の子には優しいけど」パチリ、と瞬き。
「それが戦場なら話は別だ」
至近距離で彼と目が合う。「じょ、だんっ！」一瞬でつめられた距離。背をそらして、彼の足元に煙玉を投げつけた。
ゴホゴホと咳き込む声が聞こえる。そのまま距離をとって、深く深呼吸をした。
「は」
ゴボリと口から血が溢れる。手を口元に当てると、指の間からポタポタの血が滴り落ちた。あの瞬きの一瞬で、限りなく威力の低い彼の魔法が私の腹を貫通したのだと理解する。
苦笑して、じわりと熱を持った腹の傷を強く握りしめた。
「(困った)」
はっ、と小さく吐き出した酸素を最後に息を止めた。じきに煙幕もはれる。せめてはれる前にと、気配を消して距離をつめた。
この濃度なら、よほどのことがなければ50秒は持つ。完全に口のなかを支配した血をごくりと飲み込んだ。
「(届く)」
完全に私の間合いに入った、と勢いを全て右足に乗せて振り上げる。
「ざーんねーん」
まるで語尾にハートがつくかのような言い方。足に手応えはなく、振り返った彼の顔には笑みが浮かんでいる。煙はパッと、何でもなかったかのようにはれきっていた。
「惜しかったね」と笑う彼に苦笑する。惜しいもなにも、貴方の圧勝じゃないか。彼に当たるはずだった右足は暗闇の球体に飲み込まれていて、いっさい動かない。
「ああ、くそっ」
強がったように口角を上げて、ふとこの暗闇の先を考えた。
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える(プロフ) - 汐見さん» コメントありがとうございます！賛否ある設定の物語ですが、そう言っていただけて幸いです(*^^*)これからもよろしくお願いいたします (2020年3月1日 11時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
汐見(プロフ) - 初見です！とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2020年2月29日 16時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 凜乃さん» ありがとうございます！長編の予定ですので、ごゆるりとお付き合いください。わざわざコメントありがとうございました(*^^*) (2019年12月12日 21時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
凜乃(プロフ) - 毎回とても楽しみにさせて頂いてます。更新頑張ってください (2019年12月11日 23時) (レス) id: 8218d9be2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：える | 作成日時：2019年12月4日 17時
