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「っ貴方って人は!あれほど自分を大切にしてくれと言ったろう!貴方まで煉獄さんのように居なくなったらっ、どう、するんだ……」


段々と弱々しくなる声。それは宇随が遊亭での怪我から復帰した、最初に聞いたAの声だった。


その瞳には明らかな怯えを宿していて、それは宇随に対するものというよりも、宇随がこの世から居なくなってしまうことへの怯えだ。


グッと宇随の胸ぐらを掴むAの手に力がはいる。それには宇随を支えていた嫁達も止めるべきか迷った。しかし宇随は、そんな嫁達を目で制す。


「よお、逆崎。派手な登場だな」


陽気ないつも通りの宇随の声を聞いたAは気が緩むのを感じた。「ああ、悪い、宇随さん。動揺した」


「怪我の調子は?歩けているし問題はないだろうけど。何か不便な事や頼みがあったらいつでも言ってくれ」


Aは我に返ったように力なく笑いながら言った。「もっと言うことあんだろ」と宇随は笑う。


Aはパチリと目を瞬かせる。「ああ」と、何か我慢していたものがほどかれたようにAは目を細めた。


「生きててくれてよかった、本当に」


うっすらと瞳に張った膜はAの美しさを強調するように日の光に反射する。宇随は満足そうに「おう」と動く方の手でAの頭を撫でた。


「嘘だ、嘘だあああああ!!」


ハッと、Aは意識を浮上させる。そういえばあんなこともあった、と思い出していた。


Aはあれから少しして亡くなったため、あれが宇随との最後の会話である。


「なあ、なあ。死なないんだよなあ?だって俺は鬼。上弦の──」


そこから先の音はない。


「あー…」


安堵。どっと押し寄せる疲労にAは一瞬意識を落としそうになった。傷が一気に痛みだす。そういえば自分は柱の中でも回復が人一倍遅かった。


「……炭治郎君」


会いたいようで会いたくなかったかつての後輩の名を、Aは懐かしむように口にした。

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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時

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