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探偵社に迷い混んだ一件の依頼。依頼主は目を腫らして、絶望と悲しみをその瞳に宿していた。
「人食い、人間」
敦はゴクリと喉を鳴らす。人を食う人。それは果たして人と言えるのだろうか。
「恋人の家に行ったら、部屋、が、荒らされていて」
恋人が食い散らかされていた、と彼女は語る。強盗だとか、殺人だとか、まさにいろいろな可能性を考えたが、物も取られていないうえに死体はどう考えても獣に食われたような無惨な姿、だったと。
捕食のためだけに行われた殺人。
彼女は警察にすでに捜査を依頼しているという。しかし一向に犯人の足取りは掴めず、それに家のなかにあった足跡は間違いなく人間のもの、そして現場周辺から獣の目撃情報はないと言われてしまったらしい。
警察は、恋人が亡くなったショックで気が狂ったのだと彼女を判断したようだ。
「その依頼、我々探偵社が引き受けよう」
ひょっこりと顔を出した太宰。「だ、太宰さん」と敦は驚いたように顔をあげる。
「その人食い人間、というのの被害はどうやら彼女だけじゃないらしい。敦君が鏡花ちゃんと出払っていた一昨日、同じような依頼があったのだよ」
人の形の化け物に家族を殺された、とね。太宰は深刻そうな声で言った。
「お嬢さん。夜は戸締まりをしっかりするといい。必ず。暗くなる前に、今日はもう送ろう」
「いえ、お気遣いなく…」
弱々しく笑顔を浮かべて、女性は腰を折った。「どうか」
「どうか、その化け物を一刻も早く…」
敦と太宰は頷く。
「勿論」
太宰は女性を安心させるように柔らかな笑みを浮かべた。女性はもう一度深くお辞儀して、探偵社をあとにする。
「太宰さんはその、犯人の目星がついているんですか?」
「いや?彼女の恋人を殺した犯人"は"知らない」
「は?」
敦は首をかしげる。「なあに、犯人は一人とは限らないのだよ」
「それって、複数人いるってことですか?」
敦の顔がこわばる。「化け物」
「犯人は化け物だ。彼女の言うとおりね。敦君、君、こんな話を聞いたことはないかい?」
「はい?」
「異能力なんてものが存在しない昔、日本には鬼が生息していたのだよ。人を食う、人食い鬼が」
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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時