羅刹の幻影は囁く (ページ1)

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PROLOGUE ページ1

カンカンッと、金属音が室内に響きわたる。

音の中心には人影が一つ。
分厚い作業着に身を包み、ゴーグルとバンダナで顔を保護している。
薄っすらと汗を流す中、一心不乱に工具を振り下ろす影。

最後にキンッと鋭い金属音を響かせると、手に持っていた工具を置いた。

『……よし』

黒い手袋で目的のものを摘まみ上げ、部屋の照明にあててあらゆる角度から見つめ、頷く。

直後に『暑っ』と呟き、早急にゴーグルとバンダナ、上着をソファへ脱ぎ捨てる。そのソファの背にかけられていたタオルを手に、湧き出ていた汗を拭う。

しっとりと濡れた黒い髪を一つ括ると、黒い眼帯を右目に装着した。
フゥという疲労からの息を吐き、ゴクゴクと水を飲んでいると、耳障りな音が鳴り出す。
チッと舌打ちをしたのちに、スマホを手に取る。

『…Paradox Live』

今しがた来たメールの内容を確認し、ポツリと呟く。

時期に開かれるHIP HOPの大会の名に深い溜息を吐き、スマホをソファに置くと立ち上がる。
その足で、部屋の隅にある古びた窓に近づき、窓を開く。ギィと古びた音を立て、窓はゆっくりと外開きに開かれた。

部屋中に充満した生暖かい空気を撫でるように冷たい風が部屋に流れ込む。
その冷気に気持ちよさそうに目を細め、胸元に下げられているペンダントを撫でた。

『…何事もなく、終わったらいいんだけどなぁ』

月夢Aは先のメールを開いたことを後悔するように、ウンザリとした声を出したのだった。