そして誰もいなくなった ４

長瀬と二宮3 ページ5

そっと1つ目のブルーシートをはずすと
見たことのある顔





『俳優でミュージシャンの渋谷すばるです』




すかさずニノの報告が入る

頬に涙の跡が見えた




「泣いた…？」




グレーのパーカーに
緑のMA-1
ダメージジーンズはヴィンテージもの




『お洒落ですよね、相当古着が好きだったみたいで、着てるもの、結構な値段ですよ』




胸を銃で撃たれていた

あと、綺麗な顔にかすり傷…
それ以外の外傷はなかった




「なるほどねぇ…この遺体はどこに？」



鑑識「あそこの崖の上ですね」




鑑識が指さす方向に
小高い崖が見えた。







ブルーシートを直し、2つ目のブルーシートをめくる。







「うわっ、こりゃ酷いな」


『うっ、僕…こういうの…弱いんですよっ。おえっ』


「おえ、じゃないでしょニノ。この仏さんは？」


『…えっと、…安田章大、都内でも人気の美容師みたいですね』








顔も身体も傷だらけで目も当てられない
派手目な男の遺体。







「ふーん。彼ははどこにいたの？」








鑑識「崖の下あたりです」







「崖の下？この様子だと…上から落ちたかもな」








ブルーシートを戻すと鑑識にご苦労さんと伝え
次の現場へ足早に歩き出した。








『長瀬さん、待ってくださいよ』





顎に手を当てて
考え事をしながら歩いていくと、






「…」






足元に、点々と先まで続く
赤い…跡






こりゃもう
誰の血かわかったもんじゃないな…


そんな風に思いながら
まるで

その跡に誘導されるかのような錯覚に陥った。








屋敷の近くまで来ると
裏手から、ブルーシートをかけられた遺体が
運ばれていく所だった







「ちょっと待って、見せて」







そう声をかけると
遺体がおろされた






。

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