君にもう一度 ページ6
[君にもう一度]
彼女は毎日同じ夢を見た。彼が彼女のもとへ寄ってくるのだ。けれど彼女が彼に触れようとすると、彼はスゥっと風のように消えてしまうのだ。そこでいつも彼女は目を覚ます。目を覚ますと彼女はいつもこう思う。『自分も一緒に消えることができれば良いのに』と。彼が彼女に与えてくれた幸福も彼女の中で消えかけていた。彼女はもう幸せではなかった。
その日も彼女は彼の夢を見た。彼女はこれが夢だと分かっていた。夢だと分かる夢を明晰夢というと、彼女は何かで読んだ。明晰夢が危険だとも。それでも彼女は彼の夢を見ていたかった。夢の中だけでも、彼に逢って在たかった。彼女は、夢の中で彼に触れたくても、決して触れなかった。少しでも永く彼と一緒に在たかった。彼女は彼を眺めていた。すると彼は、いつもの夢とは違うことをした。「うみゃん」と一声鳴いたのだ。次の瞬間には、彼はいつものように消えてしまった。それと同時に彼女は目を覚ました。彼女はやっと思い出した。彼がくれた幸福を。そして彼の生前、彼女自身が言った事を。
『君が在なくなっても きっときっと私はしっかり生きていくよ』
あの日から何年もの年月が過ぎた。彼女は幸せを取り戻した。彼女は今でも時々、空を見上げて彼の事を想う。そしていつも考えてしまう『君にもう一度』と。
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宮 紗蘭 - 派閥弁当さん» いつもコメントくださり、ありがとうございます (2018年8月15日 18時) (レス) id: c7cbba23b2 (このIDを非表示/違反報告)
派閥弁当(プロフ) - 完結おめでとお! (2018年7月8日 11時) (レス) id: 3c05462a8c (このIDを非表示/違反報告)
宮 紗蘭 - 派閥弁当さん» ありがとうございます (2018年6月30日 20時) (レス) id: c7cbba23b2 (このIDを非表示/違反報告)
派閥弁当(プロフ) - がーんばれ!がーんばれ!! (2018年6月30日 20時) (レス) id: 3c05462a8c (このIDを非表示/違反報告)
宮 紗蘭 - 派閥弁当さん» コメントありがとうございます。 (2018年6月22日 22時) (レス) id: c7cbba23b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮野遥奈 | 作成日時:2018年6月12日 16時