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240メートル ページ38

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[ 風強いね ]


フェリー
ふたりともデッキにいるけど、少し離れた場所。
ぼおっと景色を見ていたら、Aからそんなラインが送られてきた。


[ 飛ばされないでよ ]
[ れおくんもね! ]
[ もうちょい近くいっていいかな ]
[ 大丈夫かも。日本人、いないみたい ]


きょろきょろ周り見渡すと
たしかに日本人の姿はない。
こそっとAに近付いて、隣で立ち止まった。


「…おねーさんひとりで来てるんすか。」
「ううん。彼氏と来てるんです。」
「彼氏?どんなヤツ?」
「…こんなヤツ!」


言いながら、俺の腕にぎゅうってしがみついてくる。
子どもみたいでかわいくて、ばかやろうって頭を小突いた。

Aは慌てて俺から離れて
ごめんって小声で言いながら、挙動不審にもきょろきょろ周りを見てる。


「…いいから。」
「…調子乗りました。」
「バカ。」
「…わ、いつの間にかこんな近くに…」


Aが指差す方
自由の女神が、堂々と立っていた。
思わず息を飲む。


「結局、東京タワーと比べたら…」
「東京タワーが333メートル?で、自由の女神が93かな。」
「何メートル差?」
「……200…なんだろ、えっと、…240メートル?」
「…240メートル……全然違うね。」
「うん、全然違う。」


全然違う。
東京タワーと自由の女神は、似ても似つかない。


そう言えば前に
A、東京タワーを俺みたいだって言ってたな。
大きくて、遠くて?
そんなこと、泣きながら言ってた。

俺も、Aと自由の女神を重ねてたって
あのとき言えば良かったかな。
…いや、とても言える空気じゃなかったか。



暫くして、リバティ島に到着した。
一番最後に降りて、ふたりでゆっくり歩く。


綺麗な青空を背景に
自由の女神は、ちゃんと立っていた。
この前ひとりで見た時と、何も変わってなかった。
凛々しい
怖いくらいに、この像は存在感がある。


「……ほんとに、ふたりで見に来られた…」


さっきまで楽しそうだったAが
また眉間にシワを寄せていた。
うん、と頷いたとき
俺たちの間を、強風が吹き抜けて


その風につられるように像を見上げて、気付いた。

…まってよ
東京タワーと、何が違う?
全然違うって、何が?

横を見ると、Aが苦しそうに像を見つめていた。
心臓の動きが次第に大きくなっていく。


…ああ、なんで気付いてしまったんだろう。
東京タワーも自由の女神も、何も変わらない。
240メートルの差なんて、ちっぽけなものだったんだ。


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a - もう何回読んだか分かりません。当時GENEが大好きだった私も今では予定があえばライブに行く程度ですが、未だに何回もきなこさんの作品を読んでしまいます。こんなに大好きだと思える作品は他にありません。当時も今も変わらずいちばん大切な作品です。 (11月26日 9時) (レス) @page50 id: fb27f2c91a (このIDを非表示/違反報告)
また会いたいです - きなこさんは今は何をされていますか? (9月26日 19時) (レス) id: e10e58a731 (このIDを非表示/違反報告)
mchar(プロフ) - もう3回くらい読んでます。毎回泣いてしまうし、寝る間も惜しんで読んでしまいます。もう玲於のファンは卒業していますが、きなこさんが書く玲於が好きです。 (7月3日 8時) (レス) @page50 id: 895ee9ba7d (このIDを非表示/違反報告)
ナカム(プロフ) - 後半は特に心がギュッと掴まれて苦しくなっちゃうくらい感情移入してしまいました、、素敵な作品をありがとうございます!!2人の会話のテンポ感と雰囲気がすごく好きでした!!! (7月3日 2時) (レス) id: a627fc4932 (このIDを非表示/違反報告)
まるこめちーは(プロフ) - やっぱ玲於……カッコイイーーー!!!!!と思いました!笑 長々と失礼いたしました。 (2023年1月27日 19時) (レス) id: 58d12bf03b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2019年12月1日 22時

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