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「…北山ってやつと、どういう関係なの。」


俺の体温で、Aの肌があたたかくなってきた頃
小さくそう呟いた。
Aは一瞬短く息を吸って、動揺してるみたいだった。


「……なんで…」
「…いいから。」
「……なんにもないよ、…スーパーの、副店長で…それだけだよ…」
「……。」
「……なんで知ってるの?…なんでそんなこと聞くの…?」
「……べつに、お前がさくらちゃんのこと気になるのと、同じ理由。」
「……やだよ。」
「……。」
「…その子の名前呼ばないで、もう、会わないで、お願い。」


言いながら、俺の身体にしがみついてきた。
バランス崩して倒れそうになるのを、後ろに手ついて堪える。


「…もう会わないから。」
「信じられないよ、…もうなんにも信じられない、ずっと信じてたけど、もう無理だよ。」
「…じゃあどうしたらいいの。」
「……わからない…」


Aの涙が、俺の身体を伝った。
濡れていく。
全部もう、濡れて、弱くなって
Aの全体重が俺にかかっていた。
きっともう、元のAには戻れない。

でも戻んなくていいよ
一生このままでいて。
俺がずっと、こうして支えてあげるから


「……もう泣くなよ、目腫れる。」
「……玲於くんを、好きでいるのが…苦しい。」
「……。」
「……わたし 思ったんだよ、東京タワー見たとき…大きくて、遠くて、玲於くんみたいって、思った。」
「…うん。」
「……もう絶対届かない。…どうしたら、ここにいてくれるの。」
「…いるでしょ、今。ここにいるじゃん。」
「ちがう、…ちがうよ…体の距離なんて、どうでもいいよ…」
「……。」
「…体の距離じゃないよ…」


そのあとはずっと、膠着状態。
好きだよって何度も言ったけど、そんなわけない、の一点張りで。
Aは多分、一生分くらい泣いた。
ずっと泣きっぱなしで、ちっさい体のどこにそんな水分あるんだよって、頭撫でたけど 泣き止まなかった。


アラームが鳴り出したのは、そんなやりとりが1時間くらい続いた後のこと。

仕事行かないでって苦しそうなAの声
俺は、聞こえてないふりをした。
ボロボロのAを置いて、寝室を出る。


ドアを閉めてすぐ、さくらちゃんにラインした。


[ ごめんもう会えない。連絡もできない ]


全部どうでもよくなった。
Aが完全に俺のものになったから
もう何もかも、どうでもよかった。


カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。
笑ってしまうほど、清々しい朝だった。


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a - もう何回読んだか分かりません。当時GENEが大好きだった私も今では予定があえばライブに行く程度ですが、未だに何回もきなこさんの作品を読んでしまいます。こんなに大好きだと思える作品は他にありません。当時も今も変わらずいちばん大切な作品です。 (11月26日 9時) (レス) @page50 id: fb27f2c91a (このIDを非表示/違反報告)
また会いたいです - きなこさんは今は何をされていますか? (9月26日 19時) (レス) id: e10e58a731 (このIDを非表示/違反報告)
mchar(プロフ) - もう3回くらい読んでます。毎回泣いてしまうし、寝る間も惜しんで読んでしまいます。もう玲於のファンは卒業していますが、きなこさんが書く玲於が好きです。 (7月3日 8時) (レス) @page50 id: 895ee9ba7d (このIDを非表示/違反報告)
ナカム(プロフ) - 後半は特に心がギュッと掴まれて苦しくなっちゃうくらい感情移入してしまいました、、素敵な作品をありがとうございます!!2人の会話のテンポ感と雰囲気がすごく好きでした!!! (7月3日 2時) (レス) id: a627fc4932 (このIDを非表示/違反報告)
まるこめちーは(プロフ) - やっぱ玲於……カッコイイーーー!!!!!と思いました!笑 長々と失礼いたしました。 (2023年1月27日 19時) (レス) id: 58d12bf03b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2019年12月1日 22時

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