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ディスプレイに映るAの文字。
それを見るだけで、息できなくなるほど、苦しかった。
さくらちゃんが、大丈夫 と小さく呟く。

震える指で通話に切り替えた俺を見て
さくらちゃんは立ち上がり、リビングから出て行った。

ひとりになった部屋
すぅ、と息を吸い込む。


「……A、」
『……。』
「…泣いてんの?」
『……泣いてないよ。』
「……。」
『…自由の女神。』
「…ずっと欲しがってたじゃん。」
『……わたしが欲しいのは、本物だよ…』
「…ふ、それは無理でしょ。」
『……。』
「……じゃあさ、……本物、ふたりで見に行こう。」


返事は無かった。
この沈黙の間に、さっきさくらちゃんがくれた言葉を思い出す。

知られちゃいけない。さくらちゃんの存在を。
俺はこの4ヶ月間、ずっとAのことが好きだった。
…こんな、バカみたいな、情けない慰めを
俺は無駄にはできない。


「…俺ね、ずっと、Aが好きだよ。」


言いながら頭に浮かぶのは、初めてさくらちゃんを抱きしめたあの日。
そして、普通の友だちになりたいって言ってくれた、さっきのこと。

俺は
俺はさ


「…Aはもう、…誰かと付き合ったりしてるかもしんないけど、…俺は全然…何も。ごめん。」


俺は、こんなしょうもない嘘を
この先 一生、Aに吐き続けることを選んだ。

もう戻れない
この4ヶ月を、無かったことにできなかった。
Aを傷つけてしまう
そんなことしたくないのに。
守りたいのに。

心臓が止まるかと思うくらい、痛かった。
A、もう振ってくれていいよ、俺のこと。
それで、俺もAも、別々の場所で不幸になればいい。
それが一番良いはずなんだよ
だって俺、こんな気持ちでAに会えない。
だからもう振ってくれ

そう、思った矢先


『…わたしもずっと、玲於くんだけが好き。』


携帯の向こうのAは、泣きながらそう言った。
時計の針が、やたらと大きく音をたてて動く。
理性と本能の狭間で
Aの子どもみたいな声が、響いてた。


『……でも、これって同じ好き?…違う?』
「……。」
『…玲於くん、会いたいよ。』


…ああ、もう、待って
俺だって好きだよ、大好きだよ
会いたくてたまんないよ
でもさ

今の俺を見たら、Aはなんて言うかな。

時間が欲しかった。
Aだけを見るために、あと少しでいいから。


仕事だって嘘をついた。
寝てたら怒るよって、そんな合言葉も
今はただ悲しいだけだった。


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きなこ(プロフ) - とっぽさん» お返事遅くなってごめんなさい!直近で言うと、ただいま初恋5「どうしよう」のページで、軽井沢でふたりで撮った写真とか、得意げなあの顔のイメージでした(^ ^) (2019年12月24日 13時) (レス) id: 1d09c43b5e (このIDを非表示/違反報告)
舞華(プロフ) - きなこさん!!!!私初めてワンミリのMV見たとき、それこそあの携帯見てるシーン見たとき、占ツク感が凄いって思いました本当に!!やっぱりきなこさんのお話読んでたからそう思ったんだと思いますそしてあれは実際にやってますね!笑笑きなこさんのお話ダイスキです! (2019年12月24日 13時) (レス) id: 689ff0d5f6 (このIDを非表示/違反報告)
とっぽ - 眉毛をちょっと上にあげて…という台詞は何のお話に出てくるのでしょうか…(;_;)教えてくださるとありがたいですm(_ _)m (2019年12月2日 21時) (レス) id: 3d038c663d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさん、最高です!!玲於くんの顔を想像しながら読んでいて、いつもドキドキです。今月のviviの雑誌の玲於くんもすごくかっこよかったですよ!よかったら見てみて下さい!!それから話おもろしかったですよ!ぐだぐだじゃないです!!更新待ってます。 (2019年12月1日 21時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
ライ千(プロフ) - きなこさん、いつも楽しみに読ませて頂いてます。私もワンミリのMVを見た時、Mステで踊ってる玲於くんを見た時、あぁ、このお話に出てくる玲於くんだ....と思いながら一人でキュンキュンしてました(笑) (2019年12月1日 1時) (レス) id: a6fe8073c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2019年11月3日 22時

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