240メートルの誤算4【佐野玲於】

ストーカー ページ40

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「ありがとうございましたすみません急がせちゃって。」

支払いを済ませ、慌てて降りる。
スーパーがある通りの、裏。
タクシーが見えなくなったのを確認して、小走りで向かった。
58分だ、あー間に合ったギリだけど。

スーパーの前
駐車場の脇から、まだ明るい店内を覗く。
…え、誰もいない…

思ったとき
電気が一斉に消えた。
え、って思わず声が出る。
…店、閉まった？嘘でしょ？だってまだ59分
え、客こないからもう閉めたってこと？
そんなことある？…あるか。

はあ、と大きなため息。
苦情入れてやろうか。店閉めんの早すぎるんすけどって。
ほんとについてなかったな。
もしかしてこれ、会わないほうがいいって暗示？
…なんて、考えすぎか。


……でも待ってよ
もう24時だよ。こんな夜中に、A、あいつどうやって帰んだろ。
多分ここからだと、歩いても20分くらい。
あいつバカだから、まさか歩いて帰るつもりなんじゃ

そう考え出したら止まらなくなって
でもいま直接会うのは気持ち的に無理だし
せめてなんかあったときに守れたら…って、最終的に出した答えは尾行。

裏口近くの自販機の横に、わざとスマホ触りながら立ってた。
あーもう何やってんだ俺まじで意味わかんねえ
こんなのストーカーだろ！
分かってるけど、どうしても心配で


けど、そのあと出てきたの、若い男の子ふたり。
続いておじさん。
そして最後
裏口の鍵を閉める、男がひとり。
…あれ…？

思わず身を乗り出してその様子を見てた。
Aは？
その時はっとする。
バカか俺は。
この日、この時間にAが確実にいるなんてそんなの分かんねえだろ。
ああもうバカだほんとに。
今頃家でグースカ寝てるよ、ほんとについてない。


なんかもう色々いっぱいいっぱいで
大きくため息ついた。
マスク越しだけどそれが聞こえたのか、車に乗り込もうとしてたさっきの人が、こっちを見て。
…やべえ
時すでに遅し。


「あの、何かありました？24時で閉店なんですけども。」


自販機の明かりで照らされたそのひと
綺麗な顔してる。
首から下がったままのネームホルダーに、北山、と書いてあった。


「いや、あの…」
「何かご用でしょうか。」
「……Aって今日…」
「…はい？」
「…田中さんって、…あの、田中A。僕Aちゃんの友達なんすけど、今日バイトだからって。今から飲み行くから迎え来たんすけど。」


迫真の演技。
そうなんですか、って言葉にほっと胸を撫で下ろした。


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