240メートルの誤算4【佐野玲於】

面白くねえ ページ37

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次の日から、さくらちゃんに会うのをやめた。
仕事が忙しいって、適当に理由つけた。

何かを察した様子のさくらちゃんは、深く追求なんてしなかったし、もちろん会いたいなんて一言も言わなかった。



夜、ひとりベッドに寝転んで目を閉じ、考える。

このままさくらちゃんと連絡を取らないで
会わなくなったら、どうなるだろう。
さくらちゃんはきっとすぐ新しいイケメンの彼氏を作るだろうし
なんならあと何年後かには結婚してるかも。

それはなんか、俺にとってもすごく幸せなことだった。
さくらちゃんは、まあ若干遊びすぎなとこはあるけど、気利くし、良い子だから
ちゃんと幸せになってほしい。
月並みだけど、普通に奥さんになって、笑っててほしい。
相手はもちろん、俺じゃなくてもいい。



でも、Aは？
Aにだってもちろん幸せになってほしいよ。
結婚して子ども産んで、ばあちゃんになるまで、笑って生きててほしい。
でも、そのとき隣にいるのは、絶対に俺じゃなきゃ嫌だ。


もし俺以外のやつと一緒になるなら
もう幸せになんてならなくていい。
一生ひとりで生きていてほしい。
…こんなこと思うの、俺っておかしいのかな。

多分、依存してる。
好きとか、もうそういう次元じゃない。
メシを食わなきゃ生きていけないのと同じ
空気がなきゃ死んでしまうのと同じ

それと同じなんだよ
俺にとってのAって。


でも、Aにとっての俺はそんなんじゃない。
きっともう元彼のうちのひとり。
悠太と同じ枠に入れられて、過去の男として、いつか忘れられる。


…けどさくらちゃんは、俺をちゃんとひとりの人間として見てくれて
仕事のことも認めてくれて。
多分、さくらちゃんは、Aに無い部分なんだよ。


Aに無い部分を、さくらちゃんは持ってる。



こんなことを考えながら寝たもんだから
当然良い夢なんて見れるはずもなく。
アラームが聞こえた時には、眉間にシワが寄ってた。



「おはよ、玲於。」
「おはよ。」

楽屋に入ると、いたのは涼太くんだけ。
隣に座ると、微かに喉飴の匂いがした。


Aに涼太くんとふたりの写真見せたとき
玲於くんの顔でかく見える、とか言ってたな。
そういやあいつ、ライブDVD見せたときも、片寄くんかっこいいって笑ってたっけ。

つーか、あの古本屋の大学生
あのとき暗くて見え辛かったけど、どことなく涼太くんに雰囲気似てた。

…なんだよそれ
面白くねえ



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