240メートルの誤算4【佐野玲於】

昔話 ページ35

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「まあ、俺とAは中学からの仲なんだけどさ！」
「え、マジ？」
「うん。中1の体育祭でさ、あいつちょっと有名人になったんだよ。理由聞きたい？」
「早く話して。」
「その頃中3にマジでヤンキーな先輩いてさ、先生達ですらビビるくらいの。」
「うん。」
「で、俺らの学校、体育祭のハチマキを好きな人に渡すみたいな伝統あって、そしたらそのヤンキーがさ、Aに渡したんだよね！」


うけるよね！なんて、爆笑してる。
そこまで笑えないけど…とは思いつつも、ヤンキーにハチマキ手渡されるA想像したら、ちょっと面白かった。
あいつビビったんだろうなあ。


「まあそこで俺はAの存在知ってさ、多分向こうは俺のこと知らなかっただろうけど！」
「だろうね。」
「だろうねって！笑」
「他には？」
「んー、……でもAは基本ひとりだったよ。2年と3年で同じクラスだったけど、移動教室とかひとりで行ってたイメージ。」
「…ふうん。」
「でもさ、俺的にはそれがすげーグッときたんだよね！俺が守ってやんなきゃな〜っていう。」


…そっか。
やっぱみんなそう思う。
俺だけじゃない。
さくらちゃんの言ってた通りだ。


「男子からの人気はわりとあったよ。本人は気付いてなかったと思うけど、俺らがやってた女子の人気投票ではいつも2位くらいだった。」
「サイテーじゃんお前らそんなんやってたの。」
「やるだろ！まあそんな感じで…付き合い始めたのは、高1の冬？だったかな。」
「は？え？嘘でしょ、そんな前から？」
「うん。高1の冬から、高3の夏まで。」


…青春ど真ん中じゃねえかよ
嘘だろおい
俺てっきり、半年とか、そんくらいかと思ってた。
ガッツリ2年近く？
大事な高校生時代を？


「…ほんと嫌いだわお前…」
「なんでだよ！笑」
「冬ってなに…クリスマス？」
「うん。クラスでクリスマス会して、その帰りに告った！」
「……うざい。」
「Aの初彼氏俺だからね？言っとくけど！」
「……。」


…初、彼氏
爪先から波が起こる感覚で、なんか視界がグラグラした。
悠太、けらけら笑ってるけど
もうほんとにそんなんじゃなくてさ


「……A、もうちょっとブスだったら良かったのに。」
「は？笑」
「…俺と付き合い始めてあいつだいぶ太ったと思うんだけど。全然足りねえよ、もっと食わせときゃよかった…」
「…怖いんだけど何…？」


みんなが好きなAのことを
なんで俺は今まで、躊躇なく受け入れていられたんだろう。

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