240メートルの誤算3【佐野玲於】

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「なるほどね。Aは玲於と別れたがってるんだ。2年も前から。」
「…ナチュラルに呼び捨てしやがって。」
「でも玲於はAが好きなんだね。」

好きだわ！じゃなきゃこんなに悩まねえ

「話聞いてると、コミュニケーションが足りないと思ったな。玲於は全然自分の気持ち伝えてないよね？」
「…今さら言えないよ、あいつは俺のこと好きじゃないのに。」
「それでも伝えるんだよ！I'm so into you！」
「あ〜あ〜もういいもういい。」

こればかりはこっちのノリにはついていけない。
俺はこう見えてめちゃくちゃビビりだしオクテなんだよ。
好かれてないのに、好きって言えない。
キモがられたくない。



…なんて、悠長なこと言ってられるのは、ここまでだった。
15時すぎ。
そろそろ店移動しよって席を立ったとき、携帯が鳴り出して。

着信 A

思わず息を飲んだ。
…電話？なんで？
Aから電話なんて、いつぶり…

「Aだ！早く出ないと切れちゃうよ！」

ケントが俺のスマホを覗き込んでそう叫んだ。
みんな、ガールフレンド？って小突いてくるし。
いやいや、ちょっと待ってよ

心臓バクバクで、店から飛び出した。
チャリとぶつかりそうになって、慌てて避ける。
ふう、と息を整えて 通話に切り替えた。

「もしもし、」
『……玲於くん、』

そのたった4文字でわかったよ
普通じゃない。
なんかあったんだ。

どうした？って矢継ぎ早に聞く。
Aの子どもみたいな声は、いつにも増して自信がなさそうだった。

『……あのさ、日本帰ってくる日、やっぱり、会えないかな。』
「……え？」
『…無理ならいいんだけど、その、』
「…え、なんかあった？」
『や、ううん、なにもないの。でもちょっと、顔見たくて。』

Aがこんなふうに会いたがるのなんて、絶対何か理由がある。
なんで？
また別れたいって言われる？おれ

途端に不安になった。
俺がこっちにいる間に、何してんだよ。
今日本何時だ。
夜だろ、今、どこで何してんだよ。

あの紺色の傘を思い出した。
…やばい、今すぐ会わないと


「…俺んち、来る？」

独占欲の、かたまり。
もう、閉じ込めておきたかった。

そのあと電話を切って、住所をラインで送った。
返事は来ない。


「ラブコールどうだった？」
「……うん、会いたいって言われた。…もう俺、今すぐ帰りたい。」
「ハハ、そんなに？何も心配いらないな！」

寒いのに、汗が出てた。
愛情が憎悪に変わりそうで、苦しかった。


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