240メートルの誤算3【佐野玲於】

一般人 ページ11

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「Aはね、ほんとにいい子！これは保証できる。」
「ほんとかよ。」
「ほんとほんと！てかお前のこと知らなかったよ。テレビ見ないし色々疎い。」
「……他は？いいコな証拠。」
「ええー…まあ、口堅いし悪口も言わないかなあ。引っ込み思案だけど、そこは愛嬌で。」
「……。」
「まあ何より分かりやすいよね。考えてることすぐ顔にでる。そういうとこも含めていい子だから。安心してよ。」

俺が保証する！って、全然説得力ないけど。
目を閉じて考える。
好きになりかけてるって言った、あの顔。

「…もしだよ、もしさ、俺とAちゃんが…まあ、仲良くなったとして。」
「うん。」
「もし、付き合ったとして。」
「うん。」
「でも色々あって別れることになって、俺が振ったとして、」
「うん。」
「…大丈夫かな、なんか、売られたりしない？」
「いや、Aに限ってそれはないね。だいたいあいつ、売りたくても売る方法分からずに終わると思う。」

そう言って笑った悠太。
…そうか
Aちゃんは、思ってた以上に、思ってた通りのコだった。
あのままだった。

ああだとしたら
ほんとに悪かったな。
あんな純粋そうなコに俺は、なんてことしちゃったんだ。


「秘密守れる子、限られてるって言ってたじゃん。Aもそのうちのひとりだよ。」

悠太のそんな言葉が、仕事中も離れなかった。
…いやでも、一般人だよ。
大学生で、一人暮らししてるって、悠太今日言ってた。
ほんとにふつうのコだ。
そんなコと、芸能人である俺が？

いやまてよ、そもそも俺はまだ、Aちゃんを好きになってない。
や、身体の相性はめちゃくちゃ良かったけど！
声もかわいかったけど！
それって好きとはまた違う。
そんなの、それだけの関係でいいはず。

付き合うって
家でふたりで映画見たり
手料理食べたり
一緒に片付けしたり
記念日はプレゼントあげて
ゆっくりキスしたり
そういうのだよ。

そういうのを俺は、Aちゃんとしたいって思う？
この時点での答えは、完全にノーだった。

でも、だからこそって思ってしまったのが
たぶん運の尽き。
俺は結局、Aちゃんと連絡を取ることを選んだ。
心のどこかで楽しんでたんだ、この状況を。

このコは俺のことが好きなんだって
そう思いながら生きるのが、楽しかった。


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