冬色シルエット【白濱アラン】

それだけ ページ10

亜嵐side







目を開けると、見慣れた天井が広がっていた。




…ああ、また夢見てたんだ、俺。






ため息をつきながらアラームを止めて

ベッドから出る。




1DKのアパート

大学に入った時から住んでて、ロフトなんてもうすっかり物置状態だけど。





クローゼットに掛けてあるスーツに袖を通して

寝ぼけ眼でヘアセット終わらせて

朝ごはんなんて食べてる時間もなく、歯磨きだけして家を出た。






駅まで10分、そこから5駅

さらにバスに揺られること20分




まあ一時間もかかんないけど、なかなかめんどくさい道のり。




教材とにらめっこしながら、その時間をやり過ごしてた。






7時20分


最寄りのバス停に着いて、そこから少しの距離を歩く。





ちょっと早すぎたかな、なんて思っていると

前を歩く、小さなシルエットが目に入って







…A先生だ。





寒そうにマフラー巻いて、長めのコートから 子どもっぽい脚が見えてる。





…これだけで


後ろ姿だけで、こんなに…







亜嵐「…A先生、」






迷ったけど

これから1ヶ月、一緒にいなきゃいけないわけだし



先生は俺との思い出なんて もう忘れちゃってるだろうし






A「…白濱くん、おはよう。」






振り向いて、一瞬戸惑った表情を見せたけど

すぐにそう言って優しく笑ってくれた。



…4年前と、なにも変わってないな。






A「早いね、」


亜嵐「まあ、初日だし？」


A「偉いな、やっぱり。」


亜嵐「…A先生は何時に来てた？」


A「うーん…早く来ようと思ってたけど、いっつも寝坊しちゃって、結局8時近くだった気がする。」


亜嵐「さすが、笑 さすがA先生。笑」





さすがって言わないで、なんて

俺の腕のとこ叩いてくる。



ごめんって言うと、ちょっと笑って 許さない、って。





そんなひとつひとつの仕草がたまらなく可愛くて

悔しいけど、やっぱり惹かれてしまう。







A「男性用のロッカー、そっちね。」


亜嵐「ん。じゃあまたあとで。」


A「うん。」







A先生と別れて入ったロッカールーム


ドアを閉めて、ため息をついた。






…忘れろ、忘れろ



あの人には旦那がいるんだよ

結婚してんだよ





…だから絶対、好きになったらだめだ






気持ちが戻らないように

それだけ





…それだけ、頑張んなきゃ。



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