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亜嵐side






夕方の肌寒くなった廊下


一人進んで、階段を登って




ほとんど無心で辿り着いたのは、A先生がいる 準備室の前だった。






好きだから


好きだから、こそ…








ノックもせずに開けたドアの向こうには

前みたいに、俯きながら涙を堪える そんな先生の姿があって







亜嵐「……先生、」






小さくそう呼ぶと、

ん?って、また無理やり作った笑顔を向けてくれた。






亜嵐「……泣いてんじゃん。」


A「…だって、寂しいもん。みんなとバイバイするの。」


亜嵐「…みんなと?」






欲張りな俺は

みんなじゃなくて、白濱くんと別れるのが寂しい

って、そう言ってほしかった。









A「…早かったなあ、1ヶ月。」





言いながら立ち上がった先生は

窓際に歩いて、優しい顔で 夕日に染まる景色を眺めて…







亜嵐「……A先生、ほんとに今日で終わり?」


A「……終わりだよ、明日からは大学に戻って」


亜嵐「そうじゃなくて。…俺ら、今日で終わり?」


A「…終わりも何も、始まってすらないよ。」







そう言って俺を見上げた先生が

少し悲しそうな顔をしていたから。





……分かるよ、やっぱりほら


同じ気持ちだったんだ。






亜嵐「……始めたら、だめ?」


A「…だめだよ。」






その4文字を言い終えた後

静かに零れた先生の涙



この涙はきっと、俺だけのものだよね






右手でそれを拭って

そのまま、頬に手を添えた。




濡れる瞳で俺を見つめる先生は

きっと、世界中の誰よりも綺麗で







亜嵐「……俺、A先生が好きだよ。」







無意識に出てきたそんな言葉

先生は、何も答えてくれなかったけど






沈んでいく夕日


廊下から聞こえるチャイムの音


そして、一筋の涙






色んなものを 言い訳にして

その唇に触れた。






教室に伸びるのは

俺とA先生の、重なった影。







…ただ、幸せだった。



17歳の俺は

そう思うことでしか、この場面を良い思い出にする術がないって思ってたんだ。







でも





ゆっくり離れた唇


至近距離で交わる視線




先生は ゆっくりと口を開いて







A「…白濱くんは、きっと素敵な大人になるよ。」







そんな言葉で、俺を拒んだ。





…それが、最後


連絡先すら聞けないまま 終わってしまった。









まさか4年後


同じ場所で再会することになるなんて、知りもせずに。


それだけ→←この俺が



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ゆうき(プロフ) - すごく面白かったです。続編、書いてほしいです。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 9e39fec3dc (このIDを非表示/違反報告)
わたし - 読ませていただきました!続編読んでみたいです!!占ツクでこのお話が一番大好きで定期的に読ませてもらってます!ありがとうございます! (2018年10月5日 23時) (レス) id: 30aa3f8e55 (このIDを非表示/違反報告)
こぁお - うわあ、きなこさん、さすがです。 本当に面白かったです。 感動をありがとうございました。 (2018年2月7日 18時) (レス) id: bd05a1edf1 (このIDを非表示/違反報告)
実波 - 久しぶりに読みました。これ、続編ないんですか?笑 (2017年9月26日 7時) (レス) id: 6e3449be8e (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - しばらく開いていなかった占ツク。きなこさんの最初の作品から読ませていただいています。冬のお話を、夏に読んじゃいましたが、きなこさんの世界観はやっぱり素敵だなと思います。この作品以降のものも時間を見つけて全部読ませていただきます! (2017年8月17日 14時) (レス) id: c2a087ffac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2017年2月1日 21時

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