冬色シルエット【白濱アラン】

この俺が ページ8

亜嵐side





目が合ったり、お喋りしたり、笑ったり



A先生の隣はいつも楽しくて


その柔らかい空気が

意地っ張りで何もできなかった俺のこと、こんなに変えてくれた。




勉強だって好きになったし

頑張ってA先生と同じ大学に行こうって夢もできて




ほんとにA先生のおかげなんだ。




声には出さなくても

きっと伝わってたよね




俺は、A先生が好き。









A「…もう明日で終わりかあ。」







ある日の夕方


小さい声で、先生がそう呟いた。







亜嵐「…早かったね、一ヶ月。」


A「…うん。白濱くんのおかげで楽しかった。…ありがとう。」






そう言って笑った横顔は どこか悲しくて

抱きしめてやりたくなるような 切なさがあって





…やっぱり、A先生も同じ気持ち？


俺のこと、どう思ってる？






聞きたいことは山ほどあったのに、結局どれも言葉にできないまま。






亜嵐「…俺も、…うん、楽しかった。先生の話聞くの、楽しかった。」


A「……うん。」






返す言葉が見つからなくて

また明日ねって準備室を出た。



そのままドアにもたれかかって、涙を必死に堪える。





…一ヶ月って、こんなに早かったっけ？


A先生の声を初めて聞いたあの日から、もう一ヶ月？






……好きって、伝えていいのかな。



わかんねえ

こんなに素直に人を好きになったのは初めてで



だから、簡単になんて伝えられないし

手離しもできない。






今までと、違う。


この気持ちが正解なら、きっと 俺の初恋はA先生なんだ。







連絡先も知らない

触れたのだって、一瞬だけ



…こんな プラトニックすぎる恋愛







亜嵐「……ありえねえ、」







この俺が、さ


ありえねえよ。マジで。






泣くくらい人を好きになれるなんて


大事すぎて伝えられないなんて





…自分がこんなだって、A先生に会うまで知らなかった。









翌日





A先生 1ヶ月ありがとう




お別れ会の後、誰もいなくなった教室で


そんな文字が書かれた黒板を見つめながら

色んなことを思い出していた。






放課後準備室に来てねって、俺を呼び出したあの声


優しく灯ってた、準備室の明かり


待ちくたびれたよって笑った顔


俺を苦しくさせた、先生の涙


そしてあの、綺麗な瞳







ひとつも忘れられないのは


きっと、俺だけじゃないよね？



．

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