冬色シルエット【白濱アラン】

これでいい ページ44

Aside





真面目すぎるよ、って

この人生でわたし、何回言われたかな。





自覚はあんまりないけど


間違ったことはしたくなかったり

正義感が強すぎて自分が疲れちゃったり


そういう経験は、たしかにある。





その真面目すぎる性格のおかげで

今こうしてひとりになったけど





指輪がなくなった左手を見ながら思う。



…きっと、これが正解







真面目なわたしが唯一犯した間違いを


正当化する、たったひとつの方法






放課後の数学準備室


ひとり立ち上がって、窓際に歩き 夕陽に照らされている景色を眺めた。





…もう、あれから一年か。




わたしのことを優しく抱きしめて

言わなくていいよ、って、そう罪を被ってくれた。





…その瞬間に気付いたの。


自分が今まで、この優しさに甘えてきたこと

辛いのは自分だけだと思っていたこと





手遅れなのは分かっていたけど

でも、わたしの幸せは きっと彼にしか作れない気がしたから。








A「……白濱くん、」







大学4年生になって

たぶん白濱くんのことだから、採用試験も心配いらなかったと思う。



…今頃何してるかな

遊び呆けて、体壊さなかったらいいけど。



春からどこの学校の先生になるんだろう


あんなかっこいい先生がいたら、すぐ人気者になるだろうなあ






…こうやって白濱くんのことを考えている時間が、一番落ち着く。





あのくしゃくしゃの笑顔を思い出すだけで わたしまで笑顔になれるし

もっと頑張ろうって思えるし



そんな風に思える人に、この先二度と出会えない気がする。






5年前も、1年前も


あんなに真っ直ぐ思いをぶつけてくれたのに

わたしはなにも返してあげられなかった。




それなのに今さら求めるなんて、そんなこと わたしにはできないから




こうして冬の夕陽を眺めながら

思い出に浸るの。






…これでいい


これだけで、じゅうぶん…







そんなことを考えていた時




廊下からバタバタと足音が聞こえてくる。


まだ下校時刻は過ぎてないし、生徒かな





それにしても、随分焦って…









___________ガラッ









亜嵐「A先生…！！」









その時わたしの目の前に現れたのは



もう二度と会うことはないと思っていた

そんな、大切な人の姿だった。



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