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一人で過ごすには少々広い部屋。

Aにとっていつもは見慣れている一室も、今日はなんだかそわそわした。





「ねえ、僕らのこと連れてきたのはいいとして これからどうするのさ」
『え、ここで一緒に暮らすんだよ』
「このままコソコソと?誰にもバレずに?」
『 … 何とかなるよ』
「君さあ、計画性ないってよく言われない?」





呆れた翔也はAをじっと睨む。図星を突かれたAは、誤魔化すように苦笑いを浮かべ翔也から目を逸らした。





『いつかは言うよ、いつかは』
「今じゃダメなの?」
『 … お兄様が厄介なんだよねえ』



瑠姫はとことんAに甘い。小さい頃から兄としてAのそばにいた瑠姫は、この歳になっても過保護なままだった。








時に瑠姫からの愛情は、Aの自由に鎖をかけていた。







友達付き合いが拓実だけなのも、御屋敷の外へいつまでも一人で行かせるのを渋っていたのも 全て瑠姫が原因だった。









『お母様が亡くなってから余計にお兄様の心配性が強くなっちゃって。お兄様の許可が降りないと、全部全部取り上げられちゃうの。』






きっと、この二人の存在がバレてしまったら 瑠姫が何と言うかわからない。









もしかしたら、追い出すどころか二人を平気で傷つけるかもしれない。







瑠姫にとって得体の知れない汐恩と翔也は、Aから取り上げる対象になるに決まっている。









「やっぱり僕ら、ここに来るべきじゃなかった」
「翔也、やめろ。そんなこと言うな」
「何?こんな短時間でAに懐いちゃった?」
「助けてもらったんは事実やろ」









部屋の隅で膝を抱える汐恩。汐恩の言葉に、翔也はため息をついた。









『気を使わせてごめん、でも近いうちに必ず過ごしやすいようにするから』
「 … そう。勝手にして」









そう言って、翔也は汐恩のそばへ座り、そのまま横になった。









しばらくして、聞こえてくる寝息。








Aがそちらの方をちらりと見ると、二人はすっかり夢の中だった。









『綺麗な寝顔だなあ』








掛物を二枚、押し入れから引っ張り出す。







汐恩と翔也の元へ、足音を立てずに近寄って 手に持っていたものをそっとをかける。









その時だった。









「A?帰ってきてんの?」









障子の向こうから映るひとつの影。









廊下から聞こえる声は、瑠姫のものだった。

・→←踏み入れる、そこは"日常"



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作者名:ヨカ | 作成日時:2021年10月13日 19時

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