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座り込む少年が着ているものは、淡くも鮮やかな色をしていた。それなのに、ところどころに泥がつき、破れ、ボロボロな異様な光景。
互いに言葉を発することなく、沈黙が流れる。
逃げたらいい?話しかけたらいい?
そんな考えがグルグルとAの頭を巡った。
「来ないで」
先に言葉を発したのは、比較的華奢な色白の少年だった。
『あ … ごめん、なさい』
一歩退けるA。草履で踏む砂利が擦れる音が、やけに大きく聞こえた。
「僕たちを見たこと、誰にも言わないで。」
また少年が口を開く。もう、Aはどうすればいいかわからなかった。
このまま放っておいたほうがいいのか。
生憎、Aはすぐに人を見捨てられるほど割り切った性格は持ち合わせていなかった。
睨み合い、というより睨まれて身体が動かなくなってしまったA。すると、どこからか ぎゅるるるる と音がした。
『えっと、今の … 』
ようやく出た言葉だった。動揺した少年の目が揺れる。ぱっと腹を抑えた少年は、「なんでもない」と目を逸らした。
その時、Aは思いついたように紙袋を開けてたい焼きを取り出す。
そして、取り出したたい焼きを二人の目の前に差し出した。
『これ、食べて。少し冷めちゃってるけど』
「 … いらない」
『私には、食べたいって言ってるように見えるけどなあ』
はい、と 今度はたい焼きを口の前に持っていった。
すると、先程までだんまりとしていた 綺麗な顔立ちの少年がそのままたい焼きにかぶりついた。
「ちょっと、汐恩 … !」
『あなた、汐恩っていうの?』
「 … ん」
そのままたい焼きを両手で受け取った少年 __ 汐恩はあっという間にたい焼きを平らげた。
「美味いで、翔也も食ったほうええ」
「いつもの警戒心はどこに行ったのさ」
「3日もなにも食ってないやん、しゃあないやろ」
『え、3日も何も食べてないの … ?』
彼らの言葉を疑ったAは目を丸くする。
驚くAに、頷く汐恩。翔也と呼ばれた少年も、ため息をつきつつもそっとたい焼きを受け取るとちまちまと食べ始めた。
『あなたたち、どこから来たの?家は?』
「ない」
Aの問いに、ひとつ返事で答える汐恩。
翔也がたい焼きを食べ終わる頃には、2人どちらも少しだけ表情が柔らかくなった気がした。
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作者名:ヨカ | 作成日時:2021年10月13日 19時