廻り出すソレを運命と呼ぼう ページ3
江戸から少し離れた町の中心に、大きなお屋敷が建っている。
その町のみならず、たくさんの地域で名を馳せる白岩家には、それはもう花のように大切に育てられた少女がいた。
『もう、お兄様ったら心配しすぎ!』
「だってA、一人で江戸に出かけるとか正気?危なすぎるでしょ、俺も着いてく」
『私ももう15歳よ?江戸に一人で出かけるくらいできるから着いて来なくていいから!』
少女 __ 白岩Aは兄に掴まれた腕を振りほどいて家を出る。
軽い足取りで江戸へ向かう理由、それはお目当てのかんざしを買いに行くからだ。
以前江戸へ出かけた時に一目惚れしたかんざしをその日から忘れられなかった。
江戸へ向かう道中、"畳屋川西"の看板の前を通る。
その道の先にある作業場はガラス張りになっているため、中の様子が分かりやすい。
「あ、A!どこ行くん!」
声のするほうを見ると、汗を流した拓実がいた。
恐らく、父親の仕事の手伝いをしているのだろう。
Aの姿を見つけた拓実は、手を振りながら彼女の元に駆け寄った。
『江戸に買い物しに行くの』
「え、一人で?瑠姫くんは?」
『もう、拓実まで過保護なの?お兄様は置いてきたよ』
「へえ、着いてくとか言いそうやけど」
『言われたけど着いてこないでって言った』
「あー、そうなんや」
Aの言葉に、瑠姫の気持ちを察したように苦笑いを浮かべる拓実。
気をつけてな、とAに釘を刺す拓実に、Aは大きく頷いた。
一人で出かけるのは新鮮で、少しだけ冒険をする気分。
お嬢様ゆえ、大事に育てられたAにとって、一人で外へ出る日は全て特別な日なのだ。
春の風がAの頬を撫でる。
何かが始まる、大きくAの人生が動き出す。
Aは、そんなことは知るはずもない。
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作者名:ヨカ | 作成日時:2021年10月13日 19時