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いばらのおうじさま(翔也) ページ8

「ずっとずっと僕がAを守るからね!」
『ずっと…?おとなになってもしょーやがAのこと守ってくれるの?』
「うん!もちろん!」



___ 「僕は Aのおうじさまだから!」



















『今日ね、翔也の夢見たよ』
「え、僕の夢?」
『そう。 ちっちゃい時の記憶。』
「えー、なんか恥ずかしいな」









季節はすっかり夏になった。






もう今年も聞き慣れた蝉の声が、まだ覚醒し切れていない頭に響く。









重い足をなんとか前に出して学校へ向かう。









汗で肌につく制服が居心地悪い。






「どんな夢だったの?」
『翔也が、私のことずっと守ってくれるって言ってた夢』
「あー…そんな頃もあったっけな」









えへへと照れて頭をポリポリかく翔也の髪の毛がぴょんと跳ねている。









寝癖なおしてあげるよ、と頭に手を伸ばすと、素直に言うことを聞いて屈む翔也。









翔也とは、小さい頃から一緒だった。






泥だらけになって怒られた時も、駄菓子屋でおばちゃんにおまけしてもらった時も、初めて水族館に行った日も、全部全部翔也が隣にいた。









高校二年生の夏、中弛みの学年と呼ばれるとおり、私達もまたその例外ではなかった。









『そういえば新しくできたパンケーキ屋さん知ってる?』
「え、そんなのあるの?」
『うん。食べに行きたいなあって』
「じゃあ一緒に行こうよ。いつがいい?」









翔也は優しい。


私が「あれをしたい」「これをしたい」と言うと、じゃあ僕が叶えてあげるよと言わんばかりに全てを叶えてくれる。









この前なんか、誕生日でもないのに欲しかったネックレスをくれた。





高校生じゃ手を出すことを躊躇うようなそれを、まるでジュースをおすそ分けするようなノリで渡してくるものだから さすがにびっくりしてしまったのはまだ記憶に新しい。









友達には、おかしな距離感だと言われることもあった。








__ 「翔也くんって、Aちゃんに従順すぎない?」









そんな言葉、全て受け流してきた。









『いつもありがとうね』
「へへ、いいよ。Aがしたいことは僕が叶えてあげたいから」









これが、翔也のお決まりの台詞だった。









いつか私達は、別々の道を歩む日が来るのだろうか。









そんな未来なんて 来なきゃいいのに。









どんな形であっても、私だけの王子様でいてよ。

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作者名:ヨカ | 作成日時:2021年8月22日 22時

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