その心はタイムトラベラー(純喜) ページ34
懐かしい顔が揃う成人式。
式も終わり一通りワイワイと旧友と話した後、人混みから離れたベンチに腰をかける。
背中にある大きな結び目を潰さないよう、背はもたれかからない。帯に締め付けられた腰が悲鳴をあげている。
「A?」
『あ、純喜』
「ひさしぶりやな、隣ええ?」
純喜とは中二で初めて同じクラスになった。持ち前の明るさと優しさに加え頭良しルックス良しのまさしくハイスペックな純喜。目指す高校も同じで、中三の受験期にはよく放課後居残りをして勉強していた。
「高校も同じやったし、あんまり懐かしさはないな」
『うん、そうだね』
「どう?最近」
『ぼちぼちかなあ。純喜は?今大学通ってるよね』
「楽しいで、サッカーのサークルも入っとるし … あ、ごめん。誰からやろ。」
純喜の言葉を遮った呼出音は彼のスマートフォンのものだった。出ていいよと言うと、申し訳なさそうに眉を下げて席を立つ純喜。
ベンチから離れた壁に寄っかかって話す彼の姿に、胸がぎゅっと苦しくなった。
『かっこいいの、変わってないなあ』
いや、むしろそれに磨きがかかった。
高校を卒業して約2年間は直接会ったことがなかった。友達伝えに彼は元気にしているらしいと聞いていた。インスタの投稿とかストーリーを見ても、楽しそうなキャンパスライフを送っているんだとなんとなくわかった。
「ごめん、終わった」
『いいの?急用じゃないの?』
「うん、まあ。でもええねん、Aと居るほうが楽しいし」
『… 電話、女の子?』
「なんで分かったん」
『なんとなく』
恐らく、人気者の彼がいるはずの輪の中から消えて探しているのだろう。
それにしても、やっぱり女の子か。モテるのも相変わらずなんだろうな。
再び私の隣に腰掛けた純喜。先程より縮まった距離、もう肩がくっついている。
『モテるね、純喜は』
「そんなんちゃうって」
『そうなんだよ、モテるんだよ』
「なんでそんな拗ねてるん、嫉妬した?」
『してるよ、って言ったらどうするの』
茶化すように覗き込む純喜にそう返すと、えっ と小さく驚いた彼。
なんでもない、とそっぽ向くと「なんでや、教えて」と肩を掴んで揺らす純喜が面倒くさい。
揺らし方、優しいけど。
「なあ、この後同窓会来るよな?」
『うん、行くよ』
「途中で一緒に抜け出さん?」
『 … ん、いいよ』
あの頃の心は、まだ生きているのかもしれない。
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作者名:ヨカ | 作成日時:2021年8月22日 22時