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｢珍しい組み合わせだね、拓実くんとAちゃん接点あったっけ｣
｢いや、スケジュール渡そうと思って教室行ったら居らんかったからこの子経由で渡そうと思って｣
ふーん、と言いながら私の手から紙を受け取る木全くんの表情はいつもより暗い。
わざわざありがとうございます、と先輩にぺこっと頭をさげる木全くん。
｢汐恩と翔也から君の話よう聞くわ｣
『えっ、変なこと吹き込まれてませんか』
｢翔也のことめっちゃ好きな子ってだけ知っとる｣
｢ちょ、拓実くん｣
『おお、ダンス部の先輩にまで知られちゃってるんですね』
否定はしないんだ、と面白そうに笑う先輩。
ていうか私がいないところでそんな話をしてたのか。少しだけ照れくさいかもしれない。
もう時間だから、と川西先輩は自分の教室へ戻って行った。
『かっこいい先輩だね。顔も声も良すぎる。』
｢うん、まあ｣
『さすがにキュンキュンしたよ、初めて喋ったし』
｢拓実くんはやめときなよ｣
『んぇ？』
｢ああ見えて人見知りだしマイペースだし子供っぽいところあるし多分Aちゃんと合わないよ。いい人だけど。｣
『んっと、木全くん？珍しく饒舌だね？』
｢だいたいAちゃん、僕のこと好きって言う割に簡単に他の人にもキュンキュンしちゃうのどうかと思う｣
初めて見る木全くんだった。ほっぺを膨らませてぷんすかしている目の前の彼は、いつもの木全くんとはかけ離れている。
彼の言葉を飲み込んで、理解するうちに 自分の表情筋が緩くなっていくことに気がついた。
『木全くん、そんな心配しなくても私が好きなのは木全くんだけだよ』
｢ … 別に、そういうこと言いたいわけじゃない｣
『んふふ、かわいーね』
｢はあ、もう。｣
顔を真っ赤にして後頭部を掻く木全くん。照れた時にそれやるよね、知ってるよ。
『あれ、そういえば汐恩は？』
｢置いてきちゃった｣
『かわいそうに』
｢だってAちゃんと拓実くんの姿見えたから、思わず｣
『やっぱり妬いてるじゃん』
｢違うって｣
『木全くん、好きだよ』
｢君には照れるとか恥ずかしいって感情はないの？｣
教室戻るよ、と私の手首を掴んで歩くその手にはぎゅっと力が込められていた。
そんな木全くんと私の様子を見た汐恩に、後に事情説明を要求されたことは言うまでもない。
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
