【PENTAGON】恋、イロイロ【短編集】

白い病室の中【ジノ】 ページ18

ジノside









大きな病院の、小さな一部屋。








俺はその部屋の扉の前に

お見舞いの品と小さな花束を持って立つ。









ひとつ、深呼吸。









扉に手をかけ、がらっと開ける。









・









｢あ、ジノ！来てくれたの？｣


ジノ｢うん。久しぶり、A｣









よかった、今日はげんきそう。







3週間前に病室を訪ねたときは、具合が良くなかったみたいだったから


今日、元気な声を聞けて少しほっとした。









・









一年前、病に倒れたAは


それっきり病院での生活を送っている。









病気の説明をされたとき、難しい言葉が多すぎて俺はよく理解できなかった。





ただ、常に危険な状態だということは

嫌なくらい理解できた。









・









ジノ｢梨すきだよね？


梨のゼリー買ってきたから一緒に食べよ｣









｢え、ほんと！？ありがとう！

ナースさんに食べていいか聞いてみるね！｣









Aは入院中、基本病院側から決められたものを食べている。



大好きな甘いものを制限されているから

病院食以外のものを食べる時は一応ナースさんの許可をとっている。









・









無事に許可をもらい、ゼリーをおいしそうに食べるA。









以前は完全なアウトドア派だったA、


俺もよくいろんなとこに連れ回されたっけ。









ショッピングにピクニック、海は毎年行ってたし誕生日には少し遠いところに行っていろんな観光地を巡ったこともあった。





思い出すなあ、



懐かしい。









今はこの白い病室の中、ベッドの上だけでの生活を送っているA。









外の景色をぼんやりと眺めるAの横顔は


とても綺麗で、愛おしい。









俺はぎゅっと



Aの手を握る。

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