酷く醜い生き物 ページ6
Aside
朝、目を覚ますと春千夜は泣いていた。自身の“王”の名を呼びながら。私は頬を伝う涙を人差し指で拭う。彼が今何の夢を見ているのか、そしてその夢の中で何て思っているのか、私には分からなかった。
部屋着のままリビングに向かいテレビを付ける。春千夜が起きないように音量は限りなく小さくして。テレビで流れていたのは案の定昨日の話題だった。どうやらあの時の映像をライブ配信していた者が居たらしい。テレビでは一部モザイクで隠しながら、その時の様子を映し出していた。屋上から飛び降りる佐野万次郎の手を取ったのは、花垣武道。彼とは話したことは無かったが、よく春千夜からは聞いていた。佐野万次郎に気に入られた、喧嘩の弱い元壱番隊隊長。そして、二人は握手のようなものを交わした後、崩れ落ちるように落下していった。画面をよく見ると、その時には既に花垣武道の息は無かったと考えられる。事前に佐野万次郎に撃たれていたのだろう。
そして二人は、
そこでライブ配信は止まっていた。しかし、本当にこのご時世には呆れて仕方ない。人がこれから死のうと言うのに、誰もそれを止めようとしない。ただ眺め、そして見世物として扱う。結局人間というのは“自分じゃなければ良い”という考えで生きている、酷く醜い生き物なのである。
(そんな世界なんて、壊れてしまえばいいのに)
それからテレビを見続けていると、どうやら花垣武道は恋人との結婚間近だったとの事。何故そんな大切な時期に梵天という組織を追おうなんてしたのだろう。それもそれで馬鹿馬鹿しい。アンタが梵天を追わなければ、佐野万次郎は死なずに済んだのかもしれない。春千夜が涙を流すこともなかったのかもしれない。今も、“王”を絶対とする春千夜が居たのかもしれない。
ねぇ、花垣武道。春千夜はアンタを嫌っていた。今のもしもの事を想像していたら、私もアンタの事を嫌いになりそうだ。
アンタは、佐野万次郎に何を期待して会いに行ったの？
分からない。分からない分からない。何とも言えない感情がフツフツと湧き上がる中、寝室の扉が開いた。目を移すとそこにはまだ少し眠そうな春千夜が立っていて、私は直ぐにテレビを消した。春千夜は私の前まで歩いてくると、そのまま私を抱き締めた。
「…薬どこ」
『ダメ。今薬渡したらどうなるか分からない』
「お願い。薬が欲しい。薬が無きゃ、俺、俺は、」
抱き締めたと思えば今度はしゃがみ込む春千夜。そんな彼を、私はただ見つめる事しか出来なかった。
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ひめ☆そら(プロフ) - 悠さん» ありがとうございます！私も梵天ifは見たことないなぁ…と思いながら作らせて頂きました！最後までどうぞよろしくお願い致します！ (2021年9月3日 23時) (
レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 梵天でこういったifみたことなかったので楽しみです！更新待ってますね！！！ (2021年9月3日 19時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
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