何が幸せなのか ページ11
Aside
A、と誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。それが誰かなんて、考えれば直ぐに分かるというのに。それでも彼を“誰か”と表現してしまうくらいに、私はこの現状に疲れてしまっているのかもしれない。
ゆっくりと目を開けると、そこには涙を流している春千夜がいた。春千夜は私が目を覚ましたのを確認すると、直ぐに抱きついてきた。「どうしたの？」と背中を擦りながらそう聞けば、「死んだかと思った」と訳の分からない事を言う。
死ねるならとっくの昔に死んでいる。
言いかけたその言葉は、なんとかして自制した。そしてそのまま流れるように、私は彼の名を呼ぶ。
『ねぇ、春千夜』
「ア？」
『春千夜はさ、死にたいって思わないの？』
そんなの死にたいに決まっている。と、言ってからそう思った。それこそ最近は静かに落ち着いて暮らしている(情緒不安定な所は変わらない)が、佐野万次郎が死んでから暫くは死のうと暴れる毎日だ。私が居なかったら、彼はもう佐野万次郎が死んだあの日に命を絶っているだろう。
おかしな話だ。私たちはお互いに死にたいと思っているのに、お互いがそれを抑制する。一日だけ私たちを離してみろ。私は少し躊躇するかもしれないが、春千夜は直ぐに死ぬだろう。むしろ、何故私が彼の死を抑制できているのか不思議なくらいだ。
その質問をしてから、春千夜は少し考え込む。何に悩んでいるのかは知らないが、彼は彼なりに答えを出しているのだろう。私は静かにその答えを待っていると、ようやく春千夜は口を開いた。
「お前さ、俺が一緒に死ねって言ったら死んでくれんの？」
『何それ、なにかの冗談？』
「…どーだろうな」
先程まで焦っていた表情は何処へ消えたのか、今度は少し悲しそうな顔をした彼は、そのまま寝室を出て行った。
“一緒に死ねって言ったら死んでくれんの？”
その言葉が脳内でグルグルと回る。あの時、あの言葉を言われた時、本当は二つ返事で承諾してしまいそうだった。春千夜と、愛する人と死ねるなんて、なんて幸せで美しいのだろう。それだけでも私の生きていた人生に色がつく。
(本当に、一緒に死ねたら幸せなのかもしれない)
きっと私たちにはもう、生きている意味なんて無いのだから。
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ひめ☆そら(プロフ) - 悠さん» ありがとうございます！私も梵天ifは見たことないなぁ…と思いながら作らせて頂きました！最後までどうぞよろしくお願い致します！ (2021年9月3日 23時) (
レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 梵天でこういったifみたことなかったので楽しみです！更新待ってますね！！！ (2021年9月3日 19時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
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