【佐野万次郎】幻の副総長 (ページ20)

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道を開けろ不良共ページ20

Aside

辺りはオレンジ色の空から黒とも紺とも言えない真っ暗な空に変わり、時刻はもう十九時前。やっと武蔵神社に到着した私とおばあちゃんは、階段を登り始めるが、おばあちゃんが心配だった私は、おんぶをして階段を登っていた。

「悪いねぇ…」

『大丈夫だよ。しっかり捕まっててね』

階段を登る前、神社前にはたくさんの数のバイクが置いてあった。つまり、この先に不良共がいるのは確定である。しかし、あの中をどうやり切ればいいのだろうか。

「愛美愛主潰すゾ！！！！！！！！！」

そんな事を考えていたら、マイキーのそんな声が聞こえて、隊員たちの叫び声が聞こえてきた。

「おやおや、何かやってるのかね」

『…おばあちゃん、ここ最近治安悪くてさ。多分そいつらかもしれない』

「この時代にもやんちゃな子がいるんだねぇ」

『でも大丈夫。おばあちゃんは私が絶対守るから』

「ありがとね、お嬢ちゃん」

私は引き続きおばあちゃんをおんぶして、あと少しの階段を登りきる。

登りきって、そして口を開ける。

『道を開けろ不良共』

私の声に、その場にいた全員が反応した。創立メンバーは勿論、私の登場に驚いてはいるだろう。

「あ？何だテメェ」

「俺らが誰だか分かってんのか？」

『知らねーよ誰だよテメェ』

というより、コイツらこそ誰に向かって口聞いてんだ。

まぁ、私の存在を知っているのは指で数え切れるほどだ。知らなくたって仕方ない…が、明らかにこんなモブ雑魚にガン飛ばされてヘラヘラしてるほど寛大な心は持っていない。

「道を開けろ」

「…え？」

『…』

「道を開けろって言ってんだ。みっともねぇ真似して東卍の名を汚すんじゃねぇ」

マイキーがそう言うと、目の前の奴はどこか悔しそうな顔をしながら道を開けた。

『おばあちゃん、言葉汚くてごめんね』

「大丈夫だよ、ごめんね。私のために」

『ううん、昔から困ってる人ほっとけないから私』

それにしても、見ないうちに東卍も人数多くなってるなあ。やっぱりそろそろ集会出ないとダメかあ。

そして私は、やっとおばあちゃんのお参りをさせることに成功したのだった。