深愛モラトリアム【2】 (ページ8)

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柏「あなたの母親の名前は
　百合……岡野百合です」

　『……え？』

紫「…百合」

柏「自分の名前に似た施設を知って
　百合はわざわざ名古屋に行ったのね
　いつか誰かがAさんを
　見つけてくれるのを願っていたのかも」

…百合…これが私の母の名前

ずっと馴染みのあった名前が
まさか母の名前だったなんて…

柏「娘が岸さんの相手役の
　 YURIちゃんが可愛いのって
　私に雑誌を見せて来たんです
　いつもなら軽く遇らうけど
　その名前に懐かしさを感じて
　気付けば雑誌を見ていたんですよ」
　
　

紫耀の車にもあった雑誌
たった一度きりの取材の記事を
たまたま見てくれたなんて奇跡だと思えた

だって私が他の施設に居たとしたら
きっと別の名前になって
YURIと名乗ることは無かった

だとしたら柏木さんが
私を見つけてくれることは
無かったのかもしれない

柏「Aさんの写真を見て驚きました
　名前だけじゃなくて顔も
　百合と同じだったから」

　『…私は母に似てるんですか？』

柏「ふふ、良く似てるわよ
　でも瞳が茶色いのは彼に似てるかしら」

　『………嬉しいです』

柏「名前に導かれ
　その百合の花のネックレスで
　もしかして…って思うことを
　百合は分かってたんじゃないかしら」
　

肌身離さず着けていたネックレス
これは百合の花だったんだ
歪で正直に言えば百合とは分からない
この下手くそなネックレスには
二人の深い愛が詰まっているだね
　

その二人の愛が
今、私の手元にあるんだと思うと
何故か誇らしくて
更にこのネックレスを大切にしたいと思えた

柏「百合に会わせてあげることは出来ない
　でもお墓の場所は分かります
　 Aさん、行ってみますか？」

　『……はい、行きたいです』

柏「ありがとう、百合が喜ぶわ」

柏木さんは予め用意していた
お墓の場所を書いた紙を
私の前にそっと差し出してくれる

それを手に取ると
柏木さんは椅子から立ち上がった

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