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「そらるさんはいいよねええ！！？！そらるさんはあ！！あーほんとずるいなあ！！！!！」
机に突っ伏して妬むような視線を送る女に、サクッという軽い音と共にクッキーを噛み砕いた男は、彼女を軽く一瞥して鼻で笑ってからもう一枚クッキーを口の中に放り込む。
「なんのこと？」
そう、菓子を飲み込んでから尋ねた男は極自然に、流れるようにクッキーへと手を伸ばす彼女を見やった。
子気味良い音が響く。彼が女の手を軽く叩いた音である。
奇声を上げながら痛がる彼女を面白がりながら見せつけるようにクッキーを口へと運んでいった。
「ちょっとくらい食べさせてよ性悪め……」
「人のモン盗む人に言われたくないなあ」
ぐうの音も出ない彼女は、ギリギリと歯ぎしりながらも話をすり替えるように小さく咳き込んでもう一度妬ましい視線を男に向けた。
クッキーを口内で噛み砕いた彼は不思議そうに首を傾げる。
「えーっと、俺、なんかしたっけ」
「私は！！！！そらるさんがまふくんの初めてなのが納得いかないの！！！！」
「ブッッッッ」
噴き出した音の主の方に──教室の隅に二人の視線は集まる。
男は綺麗な緋色の瞳を気まずげに伏せて、跳ねた茶髪を指に絡めて苦笑した。
テロップが付くならば『俺は空気だから気にしないでね〜』といったところだろうか。
彼は忘れ物を取りに行くフリをしてそっと席を外した。
「……天月完全に誤解してたよね、アレ」
「どこに誤解する部分があるのよ、えろるさんのえっちぃ〜」
「で、なんの初めてなの？」
「華麗なスルー」
否定はしない彼に冷たい視線を浴びせつつ、彼女はあることを思い浮かべるように目を閉じながら足を組んだ。
脳裏に浮かぶのは、絹のように柔らかそうな白い髪と、思わず目尻と唇が緩んで照れたように笑う愛らしい表情。ルビーを嵌め込んだかのような瞳は最早天使と言っても過言ではないだろう。
悩ましげにため息を吐いた彼女は完全に恋する乙女そのものだった。
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作者名：けい | 作成日時：2019年6月30日 23時
