純白の天使 (ページ28)

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28話ページ28

「ねぇ、父親と同じ名前を背負って貴方はどんな気持ちなのかしら？」

知るか。
貴様のような奴に教えてなんとなる。
世界を売った男の名を。
俺に託したその憎悪の名を。

「貴様が知ってどうなる？」

「私はね、救われた時は1人だったわ。仲間の屍を超えた先には確かに望む生活は存在していたわ。」

女は流々とベラベラと喋りだす。
貴様の身内を聞いて俺が同情するとでも思うのか。
レイはレイ。貴様は貴様だ。
アルビノと言う共通点しか無いだろうに。

「あの子も言っていたわ。肉親は全員死んだって。」

「だからどうした。」

「あら、なんとも思わないの？」

「理解が出来んな。」

身体中に武器を仕込んでおいて良かった。
こうじゃ無いと落ち着かないのはあのクソ親父のせいだろう。厄介だ全く。

「貴方は殺して来た者達の声って聞いた事ある？」

「無いな。」

「私は聞こえるわ。同胞の叫びが。」

「そうか。」

「あの子も聞こえるでしょうね。」

本当にムカつく女だ。
知った口で、娘の事情を語る権利などない。

「っひ？！」

「武器を身体中に仕込む癖があってな。あの時(火事)からまた、身体中に仕込むようにしておいたんだ。万が一、レイに何かがあってはどうしようもならんからな。」

グルッペンは足に縛られた縄を切ると、カツカツとカトリーヌに近づく。カトリーヌは力なく座り込んだ。

「な、なんで…」

「俺達を拉致した者は随分と素人のようだな。拉致した者の着ぐるみは全部剥がすのが妥当だ。残念だな、カトリーヌ夫人。」

カトリーヌは手元にあったバールで殴ろうにも、力のある者の前ではどうにもならなかった。

「その中(腹)には何が(誰が)いる？」

スッと、グルッペンの足はカトリーヌの腹を抑えるかのように移動する。カトリーヌは青白い表情でグルッペンの足を退かそうとする。

「や、やめて頂戴！！離してっ！お願いよっ！！」

「命乞いか？悪くわない。それを利用させて貰うゾ」

グルッペンはカトリーヌを無理やり立たせると、少し進んだ先にあった棚に置いてある鎖を付けた。
首と腕。まるで犬の如く滑稽な姿になった。

「来い。」

「い“ぐ？！」

強く引っ張られカトリーヌはグルッペンの後ろをついて行くようにして歩き始めた。
目の前にいる兵士は困惑しながらも銃を向ける。

「夫人を離せっ！」

「撃つがいい。夫人は知らんがな。」

そう言ってグルッペンはカトリーヌの頭ではなく、腹に銃口を向けた。