21話 ページ21
「貴方は闇商売に居たのよね。良ければ話してくださる…?私も救われた身なのだけれど、助かったのは自分だけなのよ。」
カトリーヌさんは<助かったのは自分だけ>って言っていた。私はその言葉の意味がまるでずっしりと重い物を乗っけられたかのようにわかった。
「私のいたところは…真っ暗でいつもだれかの声が大きく聞こえてました。マ…母様と父様、兄様も姉様もみんな亡くしました…」
「そう…お互い肉親を売られてしまう事は貴方も私も同じなのね。それで、貴方は我々帝国に保護されたの?」
「はい、そうです。」
「お互い辛かったけれど、貴方が1番辛いのよね。保護されたばかりに奇襲に巻き込まれてしまう始末…」
「奇襲…?」
「大火事の事よ…聞かされていないのかしら?まぁ、そうよね。自分の娘だもの。」
カトリーヌさんはそう言って紅茶を飲んだ。
私も飲んだ。エミール先生やまんちゃに教えて貰った作法で。
「ふふ…幼いのに一つ一つの動きが礼儀正しくって品があるわね、レイ。誰かに教わったのかしら?」
「はい…!先生に教えてもらいました。読み書きとか教えてくれる先生で、なんでも知っているんです…!」
ちょっと嬉しくていっぱい話してしまった。
「けど、本当に吃驚したわ。あのグルッペン・フューラーが養子を取っていたなんて。」
「そうなんですか?」
パパがそんなに不思議なのだろうか?
いっつも優しくてすっごく褒めてくれるのに。
「貴方を引き取る前、冷酷王と噂されていたのよ。感情すら無く、欲のままに動く、自分に忠実な男だと…そう言われていたのよ。」
私は何も言えなかった。
それじゃあまるで絵本に出てくる悪い王様みたいだったから。けど、カトリーヌさんは昔の話って言っていたから今は違うんだ。
なんだかホッとした。もしそうだとしたら、食べられちゃうんじゃないかって。
「そろそろ二人のお話が戻ることかしら…そうね、レイこっちにいらして?」
そう言ってカトリーヌさんはソファーに座った。真っ白なドレスが綺麗に広がって妖精さんみたいだった。私が隣に座ると、カトリーヌさんの手が私の頭に乗ってゆっくりと横にされた。
「あの二人が来るまで少し寝てらっしゃい。訪問の時貴方少し疲れていたから。それまでお休みなさい、レイ。」
物凄く眠かったのをカトリーヌさんはすぐ当てた。
懐かしかった。
ママと同じ暖かさが、とっても…
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作者名:更新不定雑飽子 | 作成日時:2020年1月3日 21時