純白の天使 (ページ16)

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16話ページ16

シャンデリアが垂れ下がる大きな会場は豪華な装飾がされていて金色が目立つ。クラシック音楽が優雅に流れ、貴族達の会話が彼方此方へと聞こえてきた。
レイは慣れない光景にキョロキョロと視線を動かす。その様子にオスマンはそっと小さな声で言う。

「レイちゃん、あんましキョロキョロしたらアカンで。パパッペン見とき。」

「う、うん」

とは言えど、シルクハットのレースであまり前が見えないレイはグルッペンと手を繋いでいる手を見ることしかできなかった。

「ねえ、あの方って…」

「噂は本当のようですね…」

「冷酷のあの方が、ねぇ…」

「あんなに白い人を見た事がないわ。」

「知らないのかい？あれは…」

視線を変えても耳に聞こえてくる声はどうしようもならない。耳を塞ぎたくなるような声にレイは我慢するしかなかった。
グルッペンに連れられた先はマジックミラーの付いた部屋だった。レイはガラス越しにいる貴族達の姿にどこか落ち着かない様子であった。

「だぁ～！あいつら好き勝手に言いおって！」

そう声を上げるグルッペンの姿にレイは驚いた表情を見せた。

「まぁ、噂好きやしなぁ。」

「ひ、人…」

「ん？どうしたレイちゃん。」

「人いるのに…」

「嗚呼、マジックミラーって言うんやで。向こうからは俺らの姿は見えへんから。」

「そう…そうなんだ…」

「すまんな。嫌な思いをさせたな。」

「う、ううん！平気！慣れてる！」

「無理はするなよ。何かあったらトン氏やオスマンに言え。俺でもいいからな。」

「分かった。」

「じゃあ、行ってくる。オスマン」

「分かった。」

「良い子にしてるんだゾ。」

そう言い残し、グルッペンはオスマンを連れて部屋を出て行った。部屋に残ったトントンとレイはその場にいた。緊張で立ちっぱなしのレイにトントンは声をかけた。

「レイちゃん、あんまし立っとったら義足が痛くなるやろ。座っててええで。」

「う、うん」

ぎこちなく浅く座るレイにトントンは隣に座った。

「緊張してるん？」

そう言えば静かに頷いた。

「ほんならグルさんが戻って来るまでお話ししよか。」

「え…」

「別に話しちゃアカンとは教わってへんやろ？」

「うん…」

「なら、ええな」

そう言うとレイは少し表情が柔らかくなった。

「俺な、実は貴族が嫌いなんよ。」

「え…？どうして？」

「俺が昔いた国がな、悪い貴族しか周りにおらんくてなぁ。」

そう言ってポツリポツリと話し始めた。