(10):悲しみは底知れない ページ10
「あの」
あの後、俺は病院へ行き、診察を受けたが、特に異常は見当たら無かったので、何とか部活終了時間直前に戻って来る事が出来た。
及川のあの強烈なサーブが顔面に直撃して、鼻血と背中強打で済んで良かった、と心底思う。
あんなに速くて重い球、鼻なら骨折程度は行っていただろう。
運が良かった。
「ん?どした?」
帰り、俺に話し掛けてきた一人の生徒。
見学に来ていた一人の女子生徒だ。
彼女は俺のジャージの裾を掴み、心配そうに俺を見上げていた。
「その、大丈夫、ですか……?凄い音がしてましたけど…」
「んや、大丈夫。君、名前は?」
「なになに、松つん、ナンパ?」
「ちげーよ、知り合いに似てたから気になるだけだよ」
ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべて纏わり付く及川を引き剥がし、彼女の声に耳を傾ける。
「佐々木、なまえです…、貴方は…」
「俺は、さ……松川一静。ところで、佐々木さん、みょうじなまえって人、知ってる?」
佐々木なまえと名乗った彼女が、あまりにもなまえに似ていたので、思わず本名を名乗る所だった。
俺の問に、彼女は申し訳なさそうに首を振り、わかりません、と答えた。
俺は大丈夫、有難う、と返し、くしゃり、と頭を撫でて踵を返した。
…なまえ……
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shinobo(プロフ) - なんて私得なんでしょうか (2019年7月23日 21時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラン | 作者ホームページ:http://uranai.
作成日時:2017年3月23日 22時