第６３話 ページ21
第６３話
今日は本当に危なかった。
俺は家に帰り制服からトレーニングウェアに着替え中庭に向かう。今日の午後、救助訓練の授業でヴィランの襲撃を受けた。幸い生徒は緑谷以外軽傷で、相澤先生と13号先生だけが重体。
ヒヤヒヤさせられた一日だったけど、とりあえず一安心だな。でも直ぐに雄英体育祭が始まる。そこで俺は一位にならなきゃいけねぇ。
「あ、焦凍…」
ばったりと廊下でAに出くわす。Aはあの日以来、俺を見ても気まずそうにする事はなくなった。それに前より少しだけ、明るくなった気がする。
俺も、Aに対して少し気持ちの変化があった。コイツに助けられた恩は一生忘れられねぇし、なによりもう嫌いだなんて思えない。
だから、Aの事でもう間違えたくねぇ。けど、それよりも…
「なんでお前、ジャージ姿なんだ？」
「……私も何かトレーニングでもしようと思って」
そう言って少し恥ずかしそうに目を逸らす。Aがトレーニング、以前から少しくらいしてるのは知ってたけど、妙に張り切ってるな。
まさかまだヒーローになるつもりじゃ。
「お前、本気でヒーローになるつもりか」
「……うん」
俺の眉間にシワがよる。Aはまだ親父の事を諦めてねぇのか、なんでそこまでして。クソ親父なんかどうでもいいだろ。
Aの事で間違えたくない。でも、それとこれとは別件だ。嫌いじゃねぇと分かったからこそ、Aにはもっと自由になって欲しい。
俺みたいに、親父に囚われたままなんて…。
「……A、お前はヒーローになる必要なんか」
「違うよ、焦凍」
俺の言葉を遮りAが真っ直ぐな瞳で俺を見た。どこか吹っ切れたような、清々しい顔。
「確かに私にはまだ、ヒーローを目指すのに不純な動機がある。それは拭いきれてない。でもね、そんな自分を変えたいって意味もある」
だから、とAが続ける。
「強くなりたい。いつも間違えて、その度に焦凍に教えて貰って迷惑ばかりかけてた私を変えたい。ちゃんと前を向いて生きれるように、強くならなきゃいけない」
「………A」
そんな風に、思ってたのか。迷惑なんて思ったことねぇけど…でもAは変わろうとしてる。
なら、俺が止める理由なんて…
「……そうか」
頑張れ、と頭を撫でるとAは嬉しそうに頷いた。
その姿にギュッと胸が締め付けられる。
なんだ、この気持ち。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1765人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロ - 凄く素敵でした✨私は今まで読んできた轟の夢小説の中で、この作品が一番大好きです!次の作品も楽しみにしています! (11月22日 16時) (
レス) @page47 id: 0a0119112e (このIDを非表示/違反報告)
あやぎり(プロフ) - 妙にリアルな感じがめちゃくちゃ好きです…！主様の文もとても惹かれるもので素敵でした！完結おめでとうございます！次の作品も楽しみにしております♡ (5月2日 20時) (レス) @page47 id: d40ddaf348 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 次の作品を楽しみにして待っています…！ (2022年5月14日 21時) (レス) id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 私の中では兄弟恋愛がなかなか受け入れられないものなので普段は見ようとしないし、何なら兄弟恋愛かもって思った時点で見るのをやめようかと思いましたが、この作品はこれでおしまいじゃなくて続きを読んでみたいと思うほど面白かったです。 (2022年5月14日 21時) (レス) @page47 id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
るう - いぢめてたモブ達への復習ナシは流石に胸糞が残る (2021年9月7日 23時) (レス) id: 63584da8be (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月19日 23時
