第４３話 ページ1
第４３話
今でもまだ、鮮明に思い出す。
私はいつも一つ歳上の兄、焦凍とよく一緒にいた。他の兄弟達は歳が離れているせいもあり、遊び方や思考が違ったからだ。
だから兄である焦凍とは常に一緒で、ご飯を食べる時も寝る時も遊ぶ時も。でも、そんな日常は直ぐに終わった。
焦凍に個性が宿り、それから父が焦凍を独占するようになったのだ。私にも直ぐに個性が宿ったが、父は焦凍だけに目を向けた。毎日ボロボロになる焦凍が痛々しくて、可哀想で、でも自分に何が出来るわけでもなくて。
『お母さん…！』
そう言って焦凍が母にかけよると、母は少し疲れた顔で優しく微笑み焦凍を抱き締めた。
どうしてお母さんは疲れてるんだろう、そう思いながら私が母に近づくと、母は私に気が付きハッと少し怯えた顔をするが『おいで、A』と直ぐに笑顔を作る。
また、お母さんは…。そんな母の顔を見るのが嫌で、私は母が差し伸べる手を握り返すことなく避け続けた。母の腕の中で甘える焦凍を、少しだけ羨ましいと思った事もある。
それでも、あの晩。
一緒に寝ていた焦凍が『トイレ…』と夜遅くに起き上がり、私も行きたかったから一緒に行くことにした。廊下を歩き私はふと窓から見える月に見惚れ立ち止まる。
『子供達が日に日にあの人に似てくる…』
どこからともなく聞こえた声にハッとして前を見ると、視線の先で少し開いた扉の隙間から明かりのついた部屋の中を覗く焦凍がいた。さっき聞こえたのは、確かに母の声。
『……焦凍の左側が、時折醜く思えてしまうの』
当時まだ４歳だった私にも、母の言葉の意味が理解出来た。毎日疲れたような顔の母、父に振り回される母、父にそっくりな私を見て怯える母。
中を覗いていた焦凍が『お母さん…？』と少し震えた声で呟く。次第に大きくなるヤカンがお湯を沸かす音。ピィーという耳を劈くような音が、張り詰めていた母の心を爆破させた。
煮え湯を浴びせられ床に転がり悶え苦しむ焦凍を少し離れた場所で見ながら、この時の私は一歩も動く事ができなかった。
焦凍は左側が醜いと煮え湯を浴びせられたのなら、父の血しか受け継がなかった私は…殺されるんだろうか。また私を見て怯えた顔をする母に、殺されるんじゃないだろうか。
そう思うと、恐怖心よりも悲しくなった。やっぱり私は愛されていなかったのか、と…全てに納得してしまった夜だった。
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クロ - 凄く素敵でした✨私は今まで読んできた轟の夢小説の中で、この作品が一番大好きです!次の作品も楽しみにしています! (11月22日 16時) (
レス) @page47 id: 0a0119112e (このIDを非表示/違反報告)
あやぎり(プロフ) - 妙にリアルな感じがめちゃくちゃ好きです…！主様の文もとても惹かれるもので素敵でした！完結おめでとうございます！次の作品も楽しみにしております♡ (5月2日 20時) (レス) @page47 id: d40ddaf348 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 次の作品を楽しみにして待っています…！ (2022年5月14日 21時) (レス) id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
CLOCHE(プロフ) - 私の中では兄弟恋愛がなかなか受け入れられないものなので普段は見ようとしないし、何なら兄弟恋愛かもって思った時点で見るのをやめようかと思いましたが、この作品はこれでおしまいじゃなくて続きを読んでみたいと思うほど面白かったです。 (2022年5月14日 21時) (レス) @page47 id: 1fbe654695 (このIDを非表示/違反報告)
るう - いぢめてたモブ達への復習ナシは流石に胸糞が残る (2021年9月7日 23時) (レス) id: 63584da8be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月19日 23時
