第６話 ページ8
第６話
分かってないのは、焦凍の方だ。
さっき焦凍に地面へ押さえつけられたせいで汚れた服を脱衣場で脱ぎながら、私は悔しくて拳をグッと握りしめる。
私はお父さんに構って欲しいんじゃない。
何をしてもお父さんが私の事なんて眼中に無いことぐらい、私が一番よく分かってるよ。だから今更お父さんに構って欲しいなんて思わない。
ガラッと扉を開けお風呂場に入り、シャワーを頭から浴びた。全身に降りかかるシャワーのお湯に混じって、私の頬に別の水が流れる。
ポロポロと私の目から溢れる水は、悔しさから来るものなのか何なのか、自分でも分からなかった。
「っ………私は、ただ」
ただ、消えたくないだけ。
『人助けして満足感でも得てるのか？』
さっき焦凍に言われた言葉。
そうだよ、図星だよ。
私は人の役に立つことで存在証明をしたいだけ。
父親に興味を持たれない私でも、母親に怯えられ愛されなかった私でも、訳の分からない噂で孤立してしまう私でも…
誰かを救えば、少しは誰かの中で生きれるんじゃないかと思った。私という存在を、ちゃんと証明できると思ったからヒーローを目指してる。
ヒーローがカッコイイからとか、そういう理由なんて微塵もない。ただ自分が消えたくないから、存在証明をしたいからという自己満足の為だ。
「不純な動機……」
私は純粋で綺麗な心の持ち主じゃない。困ってる人がいれば助けたいとは思うけど、それよりも自分は人の役に立てるんだと証明したい気持ちの方が強い。
不純な動機だ。
結局は自分の存在を、生きた証を、証明したいだけの自己満野郎だよ。
別にヒーローじゃなくたって他の職業でも証明出来るかもしれない。冬美姉さんみたいな教師とか、普通の仕事だって立派だ。
それでも、私はヒーローという道を選んだ。
多分、そこは意地だと思う。
お父さんと同じNo.2の個性を濃く受け継いでいるのに、ヒーローとして育てられているのは焦凍だけ。
父や焦凍にも『お前の個性じゃNO.1にはなれない』『お前じゃ、ヒーローなんてなれねぇ』とヒーローへの道を尽く否定されてきた。
だから、ヒーローを選んだのは意地だ。別に見返したいとかそういう事を考えてはいない。だからこれも、ただの自己満足に過ぎないんだ。
消えたくない、証明したい。
自分の存在を証明したい。
誰かに愛されるということ
必要とされることを知らない今の私には
それが唯一の願いだった。
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
