第３６話 ページ38
第３６話
洗面台に向かう焦凍の背中を私はポカンと見つめていた。そんな私に鏡越しで気付いた焦凍が「どうした…？」と不思議そうにする。
「……ごめん、なんか意外で」
「なにが？」
「焦凍が私に悪いと思ってたのが…」
「お前、俺の事どんだけ酷い奴だと思ってんだ」
ムッとする焦凍は眠気とクマのせいか、いつもより目付きが悪い。でも不思議と、冷たさはなかった。
「内容はともかく、ちょっと乱暴にし過ぎた。それは俺が悪ぃだろ…どう考えても」
「…な、なるほど」
「だからそれは謝る、悪かった」
「いやあれくらい何も思わないけど……なんか焦凍って凄いね」
「は…？」
「だって冷たいし乱暴なくせに、そういうとこ変に真面目っていうか。なんか凄い」
「………お前って大人しそうな顔して口悪いよな」
あれ、今の口悪かったかな。でも焦凍はそう言いつつも別に嫌そうではない。悪口じゃないって理解してくれてるんだろうか。うん、褒めてたんだよ私。
焦凍はバシャバシャと顔を洗いながら「寝れなかったのか？」と聞いてくる。やっぱりクマが目立つから気になったのかな。
「まあ、ちょっと……焦凍も？」
「……まあ、ちょっと」
同じ言い方、いや…濁し方。こういう所は兄妹だなって思う。私と焦凍って少し似たとこあるよね。
「私も昨日はごめん。少し、言い方キツかった」
「言い方に関しちゃお互い様だろ。俺もお前も、多分口悪い方だしな」
「ええっ、私も…？」
「違ぇとは言わせねぇぞ、流石に」
んんん、なんか納得できない。そんな事を思ってると遠くから「朝ごはん出来たよ〜」と冬美姉さんの声が聞こえる。リビングに行こうとする私を「A…」と焦凍がまた呼び止めた。
そして私の目の前に立つと、そっと手を伸ばし私の頬に手を添える。えっと…なんだろう。
でも、焦凍の真っ直ぐな瞳を見ていると動けない。
「……こんなクマができる程、気にしたのか」
頬に添えた手の親指でそっと私の目元を撫でながら、焦凍が少し申し訳なさそうな顔をする。
なんで、そんな顔するんだろう。なんでそんなことを気にしてくれるんだろう。
…ああ、やっぱり焦凍は真面目だな。
「それは焦凍もでしょ。とりあえず、二人ともこんな顔色だと冬美姉さんに心配かけちゃうし…お互いしっかりしないとね」
「……ああ、そうだな」
それにしても…この手の体温は
前、夢に出てきた猫の暖かさと
少し似いてる気がした。
．
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
