第２話 ページ4
第２話
「そろそろお風呂空いたかな…」
そう思い着替えを持って長い廊下を歩きながら、少しかけている月をボーッと眺めていると曲がり角で人とぶつかった。
落としそうになった着替えを持ち直し、ゆっくり顔を上げる。ぶつかっても何も言ってこない時点で、相手が誰かなんて予想がつく。
「………焦凍」
「危ねぇだろ、ちゃんと前見て歩け」
冷たい目で見下ろしてくる私の兄。
ぶつかったのはお互い様なのに、私だけが悪いみたいな言い方。母と同様、焦凍も私の事が嫌いだ。
「ご、めん…」
「そんなんだから学校で友達も出来ねぇんだ」
「っ………」
それは、別に関係ないでしょ。
焦凍は私に対して特に冷たい。理由なんて聞いたことはないけど、どうせ自分の大嫌いな父の血を私が濃く受け継いでるからだろう。
私の横を通り過ぎようとする焦凍に、意を決して口を開く。嫌われてるのは分かってるし冷たくされるのだって慣れっこだ。
でも私だってやられっぱなしは嫌だよ。
だから…
「お父さん帰ってきてるよ」
「……！」
だから私も、たまに反抗する。
焦凍が何を言えば嫌がるかなんて、ずっと一緒に生活してきたんだから分かるよ。
「焦凍のこと探してた」
「………だから何だ」
「愛されてるね、お父さんに」
言った途端、焦凍が私の胸倉を掴む。色の違う冷たい目で私をギッと睨んだ。激しい怒りで歪んだ顔は、とても中学生には見えない。
流石に今回は殴られるかな。
「お前は本当に、どこまでも俺を…」
「……私は事実しか言ってない」
焦凍が怒る理由は分かる。
でも、だから何だと言うんだ。愛されてる人間に、愛されたことのない人間の気持ちなんて分かるもんか。
別に焦凍の事が嫌いな訳じゃない。道具のような扱いで可哀想だとも思う。でもいい加減、やめてよ。
私とお父さんを、重ねないでよ。
「お前、ますますクソ親父に似てきたな」
「強いヒーローになれそうなところ？」
「俺の癇に障るところだ」
そう言って焦凍は私の胸倉を離す。
よかった、殴られなくて。私が内心ホッとしていると「それに…」と焦凍が続ける。
「お前じゃ、ヒーローにはなれねぇ」
「っ……………」
そう言い捨て去っていく焦凍の背中を見ながら、私は悔しくて奥歯をグッと食いしばった。
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
