第１０話 ページ12
第１０話
Aが告られた、か。
そう聞かされたあの一瞬、何故か息が詰まった。直ぐにいつも通りに戻ったけど、あれは何だったんだ？
風呂から上がった俺はタオルで頭を拭きながら自分の部屋へ向かう。すると、丁度キッチンからAが出てきた。
確か、二人で何か作ってたな。姉さんはもう居ねぇし、終わったことろか。
Aからふんわりと香る甘い匂い。多分、クッキーか何かだな。それを作ってたんだろう。
Aは俺を見るなり気まずそうな顔をして、直ぐに背を向けようとする。そんなAの態度にまたイラッとして腕を掴んだ。
「な、なに……焦凍」
なんで掴んだのか自分でも分からねぇ。
なんか、言わねぇと。
「……告白って学校の奴にか」
「え……そう、だけど」
話題をミスったと今更後悔する。
なんでいきなりこんな話題出しちまったんだ、俺は。いやそもそも、なんで俺はAを引き止めてるんだ。
「……手、離して」
その言葉にまた、イラッとしてしまう。
俺もAに対して冷たい自覚はあるけど、コイツも俺に対して大概冷たいだろ。姉さんやクソ親父の前ではニコニコしてる癖に、俺にだけ…。
イライラしてついAの腕を掴む手に力が入った。Aが少し痛そうに顔を歪める。
「痛っ……焦凍、いい加減にして」
「なんだその態度。チャラい男に告られて調子に乗ってるのか？」
「はあ？それ今は関係ないじゃん。それに先輩はチャラくない。まだ少ししか話した事はないけど、ちゃんと私のことを…」
「少ししか話した事がねぇってことは、もしかして初対面で告られたのか。ますます怪しいだろ。その男はただの気まぐれとか、体目当てでお前に近づいたのかもな」
「な、に言って……」
「お前は人に好かれた事がねぇから、扱いやすい簡単な女だと思われてんじゃねぇのか」
俺がそう言うとAは俺をギッと睨んでくる。その目には薄らと涙が浮かんでいた。
「いい加減にしないと、怒るよ」
「もう怒ってるだろ」
「……なんでそんな酷いことばかり言うの」
「………………」
「もう、焦凍のこと分かんない…」
弱々しい声と共に俯くAを見下ろしながら、俺も少し冷静になってきてAの腕を離した。
解放されたAは俺の顔を見ることなく、ドボドボと自分の部屋へ去っていく。
俺だって分からねぇ。
ただ、Aを見てこんなにイライラするのは
きっと嫌いだからなんだろう。
．
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
