第１１話 ページ13
第１１話
焦凍さんが私を『助けたい』と思ったのは事実だろう。しかし『助けたい』というのも欲のひとつ。正義感だって立派な欲のひとつなのだ。
あの公園で助けてくれた時から焦凍さんはずっと私の側に居るし、何度も頭を撫でたり腕を掴んだりして私に触れている。
だから初対面の私にここまで優しくするのは、私の個性が焦凍さんの『私を助けたい』という欲を増幅したからなんじゃないか。
そうじゃなきゃ、流石に異常だ。焦凍さんの私に対する行動力が異常な気がする。どんな理由があろうと、どれだけ正義感が強かろうと…普通ここまでするだろうか。
私の個性がそうさせたのだとしたら、納得出来る。
そう説明すると、焦凍さんは「なるほどな…一理ある」と真剣な顔で自分の掌を見た。
「確かにお前にもう何度も触れてるし、お前に対して助けたいって気持ちが異常にあるのも確かだ。もしかしたら感染してるのかもな」
「っ……じゃあ」
「でも、別にいいだろ」
へ…、と間抜けな声を出しキョトンとしてしまう私の頭に焦凍さんがまた手を乗せる。
あまり慣れていない手つきで撫でながらフッと微笑み、彼は私を見下ろした。
「お前を助けたいって欲は、増幅されて困るもんでもねぇだろ。それともコレはお前にとって迷惑な感情だったか？」
「っ、そ…そんな事ないです」
「だったらお前が気にする事じゃない。お前の個性に増幅されたってだけで、偽りの感情って訳じゃねぇんだから」
だから、と焦凍さんは私に目線を合わせる。
「俺は俺の意思で、お前を助けたいと思ったってことだろ。お前の個性で増幅されて後押しされたんだとしても、俺は後悔してねぇからな」
その言葉に私の胸がギュッと締め付けられた。そんな事を言ってくれる人なんて、今までいなかった。
自分ですら、そんな風に考えたことはなかった。
私の個性は人の欲を増幅させるから、悪い事しか起こらないんだと。でも焦凍さんは私の個性に恐れるどころか、そうやって受け止めてくれる。
「ありがとう……ございます」
「…ああ。もう何でもかんでも自分のせいだと思い込むのやめろ。変な思い込みだぞ、それ」
「……はい」
じんわりと出てきた涙を堪え、私は俯きながら久しぶりに嬉しくて頬が緩んだ。
「今日のメシ、何がいい？」
「……焦凍さんの好きな物で」
「お前の歓迎なのに？」
「あなたの事、知りたいから」
長くて短い
１年間の共同生活が始まった。
．
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なんだよたけしビビってんのか(プロフ) - 全作品絵が本当に美しくて初めて絵で感動しました。また伏線が所々あってその上感動するなんて天才... (2021年5月23日 2時) (
レス) id: dfdea40777 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - タイトルの絵もなんかアニメ「ＰＳＹＣＨＯ-PATH」に絵柄が似てて感動。しかも、物語にもなんか感動した。 (2019年9月14日 0時) (レス) id: 2712192e09 (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 終わり方最高です……！泣いた (2019年4月13日 21時) (レス) id: 4ab93c79dc (このIDを非表示/違反報告)
ﾌｧｱｱｱｱ(プロフ) - 絵がちょくちょく入ってくることによりなんか映画のワンシーンでも見ている気になりますね (2018年9月8日 15時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
トミ - すごく吸い込まれるようなお話で…次を読むのが楽しいです。 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 3237980cf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月29日 17時
